劇場公開日 1981年10月31日

「没入感すごい」ストーカー(1979) らんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0没入感すごい

2025年3月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

モスフィルムがYouTubeに日本語字幕付きをわざわざ公開してくれているので、既に何十回と見てしまっていたが、ようやく劇場で見る機会を得た。

突然現れた危険区域「ゾーン」。
その中のある建物の一つの部屋にいくと、願いが叶うという。
立ち入り禁止とされているゾーンには、不法に案内人を務める「ストーカー」を頼って入るしかない。
今回、「教授(科学者)」と「作家」という2人の男性が、ストーカーに案内されて部屋を目指す。

基本的に画面は、3人の中年男性の繰り広げる陰気な冒険だ。
その途中で交わす会話や、唐突な独白(タルコフスキー監督の定番)から、部屋を目指す動機、願いとは何か、などが語られる。
部屋には無事入れるのか、その後彼らが見るものは何か。

スリリングな展開だが冗長でもあり、SF要素は弱めで、内容は宗教世界に通じるもの。
好みは分かれる映画だ。

この作品のタルコフスキー監督のメッセージは、3つだろう。
信仰の尊さ、家族の愛情、そして科学技術発展の危険性だ。
チェルノブイリを予言した映画とも言われるが、当時の社会の中には既に予兆があったのかもしれない。
宮崎駿監督が、『風の谷のナウシカ』の着想を得たというのも頷ける。

クライマックスでは、煙を上げる巨大な発電所と凍った湖を背景に、素朴な家族が無言のまま歩みを進める。
当時まだ冷戦の真っ只中で、誰も幸せにならない軍拡と技術開発競争に明け暮れた、ソ連、ロシア、あるいは世界全体の空気を感じさせる、壮大なシーンだ。

自分はもう見すぎていて、一番最初に見たときの没入感が二度と得られないことはとても残念だが、時代を超えて心が動かされる映画。
これからも定期的に上映があってほしいと思う。

らん