劇場公開日 1987年4月18日

「今まで一体、何を見ていたのか。」スタンド・バイ・ミー 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今まで一体、何を見ていたのか。

2023年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

米国からの帰国便(ANA)で通して鑑賞し、これまで考えていたのとは、全く違う映画と思った。少年たちが不明者を探しに鉄道の線路や鉄橋に沿って歩くところと、主題歌しか見ていなかったようだ。
確かに、今の感覚からすれば「12歳でもうタバコかよ」となるのかもしれない。しかし、時代は1950年代末の米国オレゴン州の田舎町、戦争(第二次世界大戦)の影も明瞭に残っている。何よりも、それぞれ異なった家庭環境や才能を持つ4人の少年の過ごした夏の二日間を描いて、彼らが目覚めてゆく瞬間を見事に切り取っている。
映画の終盤で、彼らがその後、どうなったかは示されているのだが、実は、さらに驚かされるのが、4人を演じたそれぞれの子役たちのその後である。
主人公のゴーディは、ストーリー・テラーとしての才能にあふれていたが、両親から愛されていないことを苦に病んでいた。演じたウィル・ウィートンも実生活では、家族との葛藤があったようだ。また、4人のリーダー格で、最も頼もしかったクリスは、明らかに一番能力は高いのに、家が恵まれていないことで、将来を諦めていた。驚いたことに、演じたリヴァー・フェニックスの実人生でも、過酷な運命が待っていた。
つまり、この4人は、それぞれを待っている実人生を、この映画の中で演じきっていたのだ。我々映画を見た者が、強い印象を受けたことも当然である。
長く語り継がれるべき映画と思われた。

詠み人知らず