スターシップ・トゥルーパーズのレビュー・感想・評価
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インモラルな星間SF
ヨーロッパ人がアメリカで仕事をすると、うるおいが減り陽性化し軽くなる。不合理が合理化され、隠喩が直喩になり、レイトも汎化する。「Americanized」の言葉どおりの変化がおこる。
このときどうしてもアメリカ化しきれなかった強い作家性が映画の妙味になる。
ハリウッドに進出したバーホーベンがさいしょにつくったのがロボコップ(1987)。
世界じゅうで大ヒットし一躍バーホーベンをドル箱監督に持ち上げた。が、ごらんになればわかるとおり、アメリカンなロボットエンタメ(リアルスティール/パシフィックリム/ショートサーキット/バンブルビー・・・etc)とは異なる“湿度”がロボコップにはあった。バーホーベンはなんとなく性的で淫靡なのだ。そんな描写がないにもかかわらずロボコップに出てくるナンシーアレンはなぜかとても官能的だった。
すなわちバーホーベンは、ハリウッドシステムの中でも飛び出てくるほど強い作家性の持ち主だった。
これはひとつのバロメーターだ。向こう(外国)で映画をつくったとき“個”が立ち上がる監督もいるし、誰が撮ったのかわからないような映画ができてしまう場合もある。海外進出は、監督が作家なのか、ただの現場監督なのか──を明かしてしまう。
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ハインラインの宇宙の戦士はガンダムはじめ日本のロボットアニメやスタークラフトなどゲームにも多大な影響を与えたエポックだが、バーホーベンの映画「スターシップトゥルーパーズ」以降は、宇宙の戦士と言えばバーホーベン版の宇宙の戦士のことだった。と個人的には思う。
バーホーベンが創造した未来世界はシャワールームが男女混浴になっていることだった。そんな瑣末時──と思われるかもしれないが、現実にそれがスターシップトゥルーパーズの訴求ポイントと化した。続編が軒並みB級化したのはそのせいだ。もちろん原作には男女が一緒にシャワーをあびるシーンなんかない。しかしスターシップトゥルーパーズ公開当時、男女が一緒にシャワーを浴びるシーンを見たわたしは、その奇異にきょうがくした。「なるほど未来では男女が一緒にシャワーを浴びるのか」と、感心もした。
それがバーホーベンの作家性だった。サービスで裸を挿入したいならば、もっと暴れない方法がある。男女がなぜか一緒にシャワーを浴び、その状況にまったく物おじしないDina MeyerがCasper Van Dienの尻をペチッとひっぱたく──奇景がむしろ未来世界を表現してしまっていた。バーホーベン版といえる新しい宇宙の戦士がそこにあった。
低迷もあったがバーホーベン作品をつらぬく特長は「インモラル」である。Benedetta(2021)は未見だがオランダ時代やElle(2016)はぎらぎらと扇情的、生理的だった。つまりスターシップトゥルーパーズの面白さは克己主義なハインラインをインモラル作家のバーホーベンが描いた妙味だった。
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世界じゅうの人々に愛される名著宇宙の戦士だが否定派もいる。
軍国主義を称美するような描写によって、宇宙の戦士はリベラルな人々から非難を浴びた。小説内の世界では従軍経験がないと市民権が与えられない。戦わなければ生きる資格がない──とまでは言わないものの、そのような全体主義(ファシズム)が描かれていた。
とりわけ戦後世代が多かった昭和期には、宇宙の戦士のファシズムに対して多数の否定派がいた。わたしが持っている文庫版の巻末には訳者とアンチの攻防みたいな逸話もあった。
ただしハインラインは克己主義者ではあるが単に器用なだけだ。
克己主義とは鍛えられていない未熟者に資格や権利はないという考え方であり、それを表看板にするとファシズムに見えてしまうが、人間が克己しなきゃならないのは社会通念や常識の範疇である。
つまりハインラインはファシズムを描きたかったのではなく「だらだらと自分勝手に生きてはだめだ」と言っていた──に過ぎない。
そもそも月は無慈悲な夜の女王では真逆な革命家/反体制組織が主人公だったし、老いるほど作風はくだけていった。宇宙の戦士がファシズムを称美しているととらえたのは戦後世代の過剰反応だったと個人的には思う。
ところで宇宙の戦士がファシズム論争から解放されたのは、バーホーベンのスターシップトゥルーパーズのおかげでもある。
なぜならスターシップトゥルーパーズは「だらだらと自分勝手に生きてはだめだ」との教訓を含有するハインラインの宇宙の戦士を「インモラル」作家のバーホーベンが描いた映画だった。からだ。
ちなみに「インモラル」は辞書に『道徳、道議に反すること。不品行であるさま。』とある。
かつて、さんざんファシズムを非難された宇宙の戦士をバーホーベンは男女が一緒にシャワーを浴びる進歩的未来の話に昇華してしまったのである。
結局(繰り返すが)スターシップトゥルーパーズの面白さは克己主義なハインラインをインモラル作家のバーホーベンが描いた妙味だった。
バグをやっつける星間SFなのに、なぜかエロ気配を内包してしまう作家性──。
逆に考えてみれば、バーホーベンのオランダ時代──生々しくセクシャルなTurks fruit(1973)やSpetters(1980)から、商業SFをかれに任せてみようという発想は出てこない。すなわちバーホーベンの成功はハリウッドの慧眼でもあった。
(ところでVをヴにするならヴァーホーヴェンです。ヴァーホーベンは片手落ちです。だからいっそのことバーホーベンでいいんじゃないかと思うのです。)
監督で選んでも面白いとは限らない
SF戦争映画の傑作。
本来、名前からしてスターウォーズとはこの作品がふさわしい。!
この映画の世界観がナチスや日本の戦前を思わせる民衆に対して国家に忠誠を強要する社会が描かれていてこの映画の評価を落としているようだ。
まあ!映画を見ている分には私はさほど重要ではないと思う。
戦闘シーンはリアルで迫力がある。
敵の巨大昆虫バグスの大きさの気持ち悪さ、恐怖感を頂く丁度よい大きさだ。!
ガメラに出た兵隊レギオンも絶対参考にしているはず。!
好きなシーンは前線基地を大量のバグス軍団に周囲を囲まれての戦闘シーンである。!
ハラハラドキドキのシーンだ。!
西部劇「アラモ」を思い出す。!
でも、私の好きな女性兵士ディジーは死んでしまいますが。!
「最後にあなたと愛しあえて良かった。!」は涙もの!
私は「カルメン」より「ディジー」が好きだ。!
ラズチャック愚連隊。万歳。
パワードスーツが出ないなんてありえない
パロディだった!?
この上ないSF最高傑作
巨大昆虫と人間が戦争するというB級臭プンプンのテーマだが、これが実は至高のSF映画だったりする。
当時としては文句なく最高の出来だったし、今観ても多少古臭くは感じるかもしれないが楽しめると思う。
ちなみに2以降は監督も違う酷い駄作なので観る価値無し。
映像技術の向上とともに
昆虫パニック映画もちゃんと映画作品として観られる様になった作品。
明らかに異種間の戦争で指導者?が人間を消費する戦争に向かわせる流れがオーバーに表現されている。
実際にあんな戦争に参加したら、段々平時の感覚を失うのは自明の理だ。その辺は目をつぶってこのバカな映画を楽しむのがこの作品を楽しむコツと思う。
シリーズ化もされており、ゲームもあるし今後も虫たちは進化を重ねるのだろう。
その時に人間がどれほどの進化をしているか…気になるが(笑)
しかし何年かに一回観たくなるこの作品。
アクションホラー映画としての質は抜群だ。
多少ギミックとかちゃちな所もあるけど時代的に許せる。男女入り交じって裸でシャワー浴びながら雑談してる様とか今時には観られない内容だ。
そして敵のバグズ…マジで強すぎる(笑)
個々の殺傷能力もさる事ながら、数が多すぎる。
空を飛ぶのも居れば、超強力な酸のシャワーを噴き出す奴もいる。
果ては地上から宇宙空間に停泊している宇宙戦艦を易々と破壊する威力の攻撃も出来る。
正直、こりゃ敵わんわと思う。
人が使うあんな豆鉄砲ではとても敵わないと思う。
ラストシーンにはちょいマシになった兵器が登場してるので、次回作では使ってたかなぁ?
また2~4のシリーズ見直そうと言う気になった。
やりすぎバーホーベンのやりたい放題劇場
ヴァーホーベンの映画は人が作る情報の不気味さを認識させてくれる。
傑作!傑作中の傑作。
未来、架空の国のプロパガンダ映画として作られてる。
勇ましく戦うんだ!って人間があからさまに、わざとらしく成功している。
と、同時に普通の民間人が命を投げ出すまでの洗脳プロセスの映画になっている。
フルメタルジャケットのホラーコメディ版という印象。
各登場人物の流れをまとめる
■主人公
学園カーストのトップ、彼女(軍隊志望)がいる、教師の授業を経て、彼女にカッコつける為なんとなく軍隊に入隊(突撃隊、海兵隊。致死率非常に高い)
ここでもリーダーに選抜されるが彼女と別れ、ミスを犯し除隊。が、宇宙人からの攻撃で両親を殺され戦う決意。
出撃①、重傷を負う。部隊転属。高校教師が率いる部隊に転属。高校教師の言うとおりに動く主人公、自分の意志で決めていない。(自分で決めなさい、選択の自由はあると言われるがその余地がない)
出撃②、アメフトのようにスポーツ感覚で戦争、戦う。
出撃③、敵の攻勢、自分を追ってきた女の子、教師共に死ぬ。これがきっかけとなって主人公は変化している。戦争に向かわせた政府ではなく敵を憎むように変化している。なぜそのように体制側に思考が向かなかったのだろう。
出撃④、彼女と再会。敵の頭脳を見つける。
ラスト、立派な戦士になってしまった主人公。
■ヒロイン
ファムファタールとして描かれている。兵士になると主人公が決めたら体を許す。パイロットだから前線行かない。高みの見物。どう見ても悪女として出てくる。男を取っ替え引っ替え。
■友達の超能力開発者
服装がまんまナチス。頭脳明晰でテレパシー能力(洗脳?)を研究している。その延長として
軍隊では戦争に向かわせる洗脳を研究する。イタチに虫を与えるイメージの研究の先にあるのは人々を戦争に向かわせる研究への布石か?
この映画の中で主人公は何も自分で決めていない。その時、その時の状況に沿って、命を投げ出す人間になった。それは、
虫の長が人間の脳を吸い取って殺す→脳無し→思考がない、考えずに死ぬ人間のメタファーとして描かれている。
そしてその諸悪の根源であるはずの軍隊でさえ失敗してもトップが辞任して新しい人が来るだけ。何も変わらず続いていく。悪の核となる人物・組織が無くアメーバのように人々の殺戮システムは続いていく。
この映画は何か怖い。主人公が平気で自分の命を捨てることをいとわない人間に変化してしまったから。国の目的は1時間で10万人死ぬ戦場に躊躇なく飛び込む人間を作ることだった。
軍事施設で主人公が見た緊急速報、虫はブエノスアイレスに隕石を落として人類に脅威を与えることができるのに、なぜ人間が攻め込んできたときにそれをしないのか?そもそも本当にブエノスアイレス襲撃はあったのだろうか?兵士の戦意を高めるための嘘なのではないか。
どうも人類側の攻撃をきっかけとしたことが匂わされているが、この戦争は財政再建等の理由で他文明を攻撃し誰も責任を取らないまま虫も人類も殺しあっているのでは無いか?
ポールヴァーホーベンの映画はニュース、人が作る情報の不気味さを認識させてくれる。
良く映画化の企画が通ったものだ
ハインラインの原作、宇宙の戦士を銀背のハヤカワSFシリーズで読んだのは遥かな昔、中学生の夏休み
内容はほとんど覚えていないが全体としては原作に沿っているとは思う
映画化の企画を通す為にはハリウッドの青春物語の味付けは必要悪と理解できる
悪意があるくらいグロいシーンをこれでもかと見せる
これは敢えてやってる
観客に直視しろと突きつけている
その為にも中和剤として必要だったとも思う
必要以上に青春物語を強調して作風と画面を明るくし、それぽい役者を揃えている
原作にあるような外骨格のメカニカルな機動戦闘服での戦いを見たかったし、出ないのはがっかりだと本作を観る前は思っていた
しかし生身の戦闘員が血みどろの泥々になって、手足を失ってでも戦わなければ、敵に本当に勝利することなぞ出来ない
その覚悟がなければ民主主義の防衛なぞ絵空事だというメッセージはよく伝わる効果があった
風刺を効かしては茶化してみせるが本当のテーマはそこだ
しかし本作をもしもクリストファーノーランが監督したならと思ってしまう
それこそ伝説の作品にはなったろうが、とても悲惨過ぎて上映できなかったかもしれない
だからこれでよかったのだ
宇宙戦艦ヤマトの影響を受けたシーンを散見した
隕石爆弾はもろにそれだし、被弾した宇宙戦艦から乗組員が真空中に吸いだされるシーンもそうだ
学園ラブコメ→宇宙アカデミー→異種交戦パニック
素直な主人公ジョニー、彼女のカルメン、テレパシー能力を持つカール。なんといっても鋭利な脚を持つ黄黒のまだら模様の甲殻類バグズの造形が秀逸、かつ親玉のブレインバグの形容しがたい強烈なビジュアルなにあれ!ぶにぶにした表皮に複数の目玉、あと脳みそチューチューすする針みたいなの。殺害描写が相変わらずエッグい、頭部破壊や手足が舞い飛ぶ。874万人の死者。水中治癒装置ってドラゴンボールのフリーザ船の中にあったアレ。デカイ昆虫のけつにジョニーが手榴弾をトライ、返り血ならぬ返り汁ぶしゃー。ブレインバグを捕らえテレパシーを試みるカール「おびえてる」。ナレーションや中継が随所に差し込まれるプロパガンダニュース風味。
美女にも容赦ない(笑)
公開時映画館で観て以来の視聴。こんなにグロくてエッチだったんですね、忘れてました。
矢継ぎ早な展開でテンポがよく、退屈はしない。ご都合主義すぎる感も否めないが、美女も含めてズバズバッ、グサグサッと容赦ない描写連発で、ある意味挑戦的な映画。
音楽もいろんな番組で今でもよく多用される印象深い曲。
主人公の故郷がやられるところは、戦いに身を投じる動機づけとしてもうちょっと丁寧に描いて欲しかった。
戦争映画、反戦映画とのコメント多いみたいですが、戦争映画ではあっても反戦映画ではないと思います。ハッピーエンドなので。製作者の意図はわからないけど...
蛇足ですが、宇宙船が爆発するシーンは銀河英雄伝説を実写化したみたいに思えました。
風刺!グロ!…痛烈にヴァーホーヴェン節炸裂!
思い出しレビュー25本目。
『スターシップ・トゥルーパーズ』
鬼才の鬼才っぷりが遺憾なく発揮されたSFアクションの快作!
戦争への風刺、グロ描写が強烈インパクト!
俺たちは強い!俺たちは絶対勝つ!…意気揚々と戦地へ赴くも、それはものの見事に挫かれた。
絶対勝てる戦争など無い。敵への過小評価。
串刺し、切断…見るも無惨なやられっぷり。
ヴァーホーヴェン節が痛烈だ。
そういう意味合いも込めつつ、SFアクションとしてもワクワクするほど面白い。
巨大宇宙バグを駆逐せよ!…という分かり易さ。
主人公の成長。
バグズのビジュアルも秀逸。
無数のバグズが大地を疾走しながら覆い尽くすあのシーンは、絶望と共に圧巻であった。
その後シリーズ化されるも、B級的になったり、CGアニメになったり。
やっぱりヴァーホーヴェン節炸裂のこの第1作目が最高だ!
唯一無二のSF
この世界観、映像…「SF映画」としてはだいぶ浮世離れしていると思うが、それでも違和感無く観賞することが出来るのはポール・ヴァーホーヴェン監督だからだろうか。私は彼の監督作品の中で最も気に入っているのだが、本作(本シリーズ)は"グロくてキモい"ため、人には中々勧めにくい作品である。
こういう映画は好きな人だけ愛せば良いのだろうか。また、同年代のSF作品と比べると、小道具のチープさを感じるのだが、そのB級感のある雰囲気もポール・ヴァーホーヴェン監督の持ち味と言える。
本作はSF戦争映画という言葉が最も当てはまるのだが、徹底的に反戦思想を固めているのがミソである。本作を観て地球連邦軍のやり方に多少の不信感を抱いたり、あからさまなニュース映像もその思想を助長している。ニュース中の台詞、「もっと知りたいですか?(日本語吹き替えは確かそうだった)」 は好きな台詞の1つだが、良い所だけ切り取る様なニュース映像と、戦地では腕が千切れ、内蔵が飛び出して苦しみながら死んでいく機動歩兵隊がわんさかいるのである。兵士になれば市民権を得られるというトンデモ設定も反戦思想の現れだろう。
昆虫型エイリアンの大群、無惨な機動歩兵隊の遺体の数々、突然のサービスショット等のB級スタイルの超A級大作、未来に残したい名作だと思う。主演のキャスパー・ヴァン・ディーンは本作以降大作に恵まれず、「エイリアン2」のランス・ヘンリクセンと同じ運命を辿ったが、今どうしているのだろうか。。。
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