「ヴァーホーベンの映画は人が作る情報の不気味さを認識させてくれる。」スターシップ・トゥルーパーズ ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴァーホーベンの映画は人が作る情報の不気味さを認識させてくれる。
傑作!傑作中の傑作。
未来、架空の国のプロパガンダ映画として作られてる。
勇ましく戦うんだ!って人間があからさまに、わざとらしく成功している。
と、同時に普通の民間人が命を投げ出すまでの洗脳プロセスの映画になっている。
フルメタルジャケットのホラーコメディ版という印象。
各登場人物の流れをまとめる
■主人公
学園カーストのトップ、彼女(軍隊志望)がいる、教師の授業を経て、彼女にカッコつける為なんとなく軍隊に入隊(突撃隊、海兵隊。致死率非常に高い)
ここでもリーダーに選抜されるが彼女と別れ、ミスを犯し除隊。が、宇宙人からの攻撃で両親を殺され戦う決意。
出撃①、重傷を負う。部隊転属。高校教師が率いる部隊に転属。高校教師の言うとおりに動く主人公、自分の意志で決めていない。(自分で決めなさい、選択の自由はあると言われるがその余地がない)
出撃②、アメフトのようにスポーツ感覚で戦争、戦う。
出撃③、敵の攻勢、自分を追ってきた女の子、教師共に死ぬ。これがきっかけとなって主人公は変化している。戦争に向かわせた政府ではなく敵を憎むように変化している。なぜそのように体制側に思考が向かなかったのだろう。
出撃④、彼女と再会。敵の頭脳を見つける。
ラスト、立派な戦士になってしまった主人公。
■ヒロイン
ファムファタールとして描かれている。兵士になると主人公が決めたら体を許す。パイロットだから前線行かない。高みの見物。どう見ても悪女として出てくる。男を取っ替え引っ替え。
■友達の超能力開発者
服装がまんまナチス。頭脳明晰でテレパシー能力(洗脳?)を研究している。その延長として
軍隊では戦争に向かわせる洗脳を研究する。イタチに虫を与えるイメージの研究の先にあるのは人々を戦争に向かわせる研究への布石か?
この映画の中で主人公は何も自分で決めていない。その時、その時の状況に沿って、命を投げ出す人間になった。それは、
虫の長が人間の脳を吸い取って殺す→脳無し→思考がない、考えずに死ぬ人間のメタファーとして描かれている。
そしてその諸悪の根源であるはずの軍隊でさえ失敗してもトップが辞任して新しい人が来るだけ。何も変わらず続いていく。悪の核となる人物・組織が無くアメーバのように人々の殺戮システムは続いていく。
この映画は何か怖い。主人公が平気で自分の命を捨てることをいとわない人間に変化してしまったから。国の目的は1時間で10万人死ぬ戦場に躊躇なく飛び込む人間を作ることだった。
軍事施設で主人公が見た緊急速報、虫はブエノスアイレスに隕石を落として人類に脅威を与えることができるのに、なぜ人間が攻め込んできたときにそれをしないのか?そもそも本当にブエノスアイレス襲撃はあったのだろうか?兵士の戦意を高めるための嘘なのではないか。
どうも人類側の攻撃をきっかけとしたことが匂わされているが、この戦争は財政再建等の理由で他文明を攻撃し誰も責任を取らないまま虫も人類も殺しあっているのでは無いか?
ポールヴァーホーベンの映画はニュース、人が作る情報の不気味さを認識させてくれる。