スクリーマーズ

劇場公開日:

スクリーマーズ

解説

辺境の惑星に取り残された人々と人間そっくりに進化を遂げた殺人兵器の戦いを描いたSFサスペンス。「ブレードランナー」などの原作者としても知られる作家、フィリップ・K・ディックの短編『変種第二号』(ハヤカワ文庫『パーキー・パッドの日々』に所収、また『人間狩り』の題でちくま文庫『人間狩り』に所収)の忠実な映画化で、人間と酷似した贋物の存在によるアイデンティティ崩壊の不安、というディックが一貫して描き続けてきたテーマが色濃く現れている。脚色は「エイリアン」などのSF/ホラー映画専門の脚本家で、ディック作品は「トータル・リコール」に続いて2度目のダン・オバノンと、「フライトナイト2 パンパイアの逆襲」のミゲル・テファダ=フロレス。監督には「スキャナーズ2」「同3」のカナダ映画界の鬼才クリスチャン・デュゲイが当たった。製作は「スキャナーズ2」『頭脳警察』(V)のトム・ベリーとフランコ・バティスタ、エクゼクティヴ・プロデューサーは「キャット・ピープル」(82)のチャールズ・W・フライズ、ジョゼ・ベルナール、「バーチャル・ウォーズ」のマサオ・タキヤマ。撮影は「血のバレンタイン」のロドニー・ギボンズ、音楽はノルマンド・コーベイル、美術は「ロボコップ」TVシリーズのペリ・ゴラーラ、編集は「白い家の少女」のイヴ・ラングロワ。視覚効果監修は「ターミネーター」のアーネスト・ファリーノ、デシタル効果監修は「ロジャー・ラビット」のリチャード・オスティガイがそれぞれ担当。出演は「ロボコップ」「同2」「ニュー・エイジ」のピーター・ウェラー、『フアイナル・ゲーム』(V)のロイ・デュプス、「ダリアン」のジェニファー・ルービン、「ドアーズ」のアンディ・ラウアー、「ブレインスキャン」のチャールズ・パウエル、本作がデビューの子役マイケル・カロスほか。

1996年製作/108分/カナダ・アメリカ・日本合作
原題または英題:Screames
配給:松竹富士(松竹=フジクリエイティブコーポレーション=K2エンターテインメント=メディアリング提供)
劇場公開日:1996年11月30日

ストーリー

2068年、惑星シリウス6Bで新エネルギーのベリニウム鉱石が発見されたが採掘の際、致死量の放射線を出すことが判明。対立する惑星開発企業新ブロック(NEB)と科学者・労働者が結成した連合軍はやがて泥沼の戦争に突入した。地表には連合軍が開発したスクリーマーと呼ばれる防御用兵器が徘徊していた。自己修復機能を備えるスクリーマーは所在不明の工場で製造され、生きるもの全てを襲うようプログラムされたこの殺人兵器は、今では連合軍側にとっても大きな脅威となっていた。そんな時、連合軍のヘンドリクソン司令官(ピーター・ウェラー)は、地球総司令部のグリーン長官から、惑星トライトン4で安全なベリニウム鉱石が発見され、NEBとの休戦協定が進み出したと聞かされる。やっと平和が訪れると安心したのも束の間、民間の宇宙船に偽装した攻撃艦が地表に不時着するのに遭遇。唯一の生存者であるエース上等兵(アンディ・ラウアー)を詰問すると、彼らはトライトンのNEB攻撃の選抜隊で、後続の大部隊もトライトンを目指していると言う。休戦の話を聞いたばかりなのにと驚くヘンドリクソンに、エースは長官が2年前に死んだ事実を教える。味方に裏切られていたことを知ったヘンドリクソンは、こんな無意味な戦争を一刻も早く中止すべきだと主張し、エースを連れてNEB基地へ和平交渉に向かった。彼らは核兵器と放射線で汚染された雪原を進むうち、建物に隠れていた少年デイヴィッド(マイケル・カロス)と出会う。3人がNEB基地に近づいた時、銃声が轟いてデイヴィッドが撃たれ、胸に空いた穴から機械が覗いた。デイヴィッドは進化したスクリーマーだったのだ。ヘンドリクソンたちは、NEBの兵士ベッカー(ロイ・デュプス)とロス(チャールズ・パウエル)、闇屋のジェシカ(ジェニファー・ルービン)と連れ立って司令部に到着するが、既に全滅していた。ヘンドリクソンはコンピューターで、スクリーマーのタイプ1が爬虫類型、タイプ3がデイヴィッド型だと知るが、タイプ2は不明だった。ベッカーはロスを疑って殺してしまうが、彼は人間だった。疑心と無力感にとらわれた一行は連合軍基地にようやくたどり着くが、ゲートが開いて出てきたのは無数のデイヴィッド型スクリーマーだった。ヘンドリクソンたちは苦戦の末に全滅させるが、ベッカーがエースを殺してしまう。彼がタイプ3だったのだ。ベッカーを倒したヘンドリクソンは、いつしか愛するジェシカを連れて、脱出用宇宙船の発射基地に向かう。宇宙船は一人乗りだった。そこへジェシカと瓜二つの女が現れ、二人のジェシカが争う。彼女もまたタイプ3だった。そこへ再び、エースの顔をコピーしたベッカーのタイプ3が現れる。今度こそ、これを破壊したヘンドリクソンは宇宙船に乗り込むと、一路、地球を目指した。

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写真:Album/アフロ

映画レビュー

3.5荒唐無稽の中にも確かな現実感

2024年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

ハリソン・フォードの『ブレードランナー』(82年)、シュワちゃんの『トータル・リコール』(90年)、トム・クルーズの『マイノリティ・リポート』(02年)等々、フィリップ・K・ディック原作の映画化作品にはSF映画の名作が多いです。そしてこの『スクリーマーズ』(96年)もディック原作の映画化作品です。 今作の主演は『ロボコップ』(87年)や『裸のランチ』(91年)のピーター・ウェラーです。上記の作品群の主演の人たちと比べると少々地味かなって印象で、作品の存在感もやはり地味です。が、この作品も間違いなくディック原作映画のエッセンスを内包しています。 私たちが現実だと認識している世界。しかし私たちは何を根拠にそれを「現実」だと認識しているのだろうか?もしかしたら誰かにこれが現実だと作為的に思い込まされているだけかもしれない。そもそも「私」とは一体何のなのか?何をもって私は「私」という存在を認識しているのだろうか?というような考えだしたらドロ沼にハマる考えを教えてくれるのがディック原作の映画です。正直そんな事教えて欲しくなかったのですが、物心ついた時には無防備な心にこのディックイズムを植え付けられてしまっていましたので、気付けば見たものを見たままに受け入れる素直な心は失われ、すっかり疑り深い性格となってしまいました。(そのくせ単純で物事を深く考えませんが…) 物語の舞台になる惑星シリウスでは代替エネルギー源であるベリニウム鉱石というものが採鉱できるのですが、採鉱時に致死量の放射線が発生することが発覚しました。 そのため労働者や科学者の「連合」は即時採鉱中止を訴え、採鉱事業の権利を有する新経済統合社「NEB」は労働者たちに採鉱を続けることを強要しようとし、この2勢力間で掘る・掘らないをめぐっての戦争が起こります。そして開戦から10年目―。という世界でのお話です。 一応ことの経緯はスター・ウォーズのように映画冒頭に字幕が流れて説明されるのですが、 この映画ちょっと状況説明や人物描写が控えめで、お話の流れが分かりづらいです。主人公は「連合」の兵士で、物語が進むうちに敵対勢力「NEB」の兵士たちとも行動を共にするようになりますが、彼らの関係性や現状、言動が理解しづらく、唐突で強引な印象になる箇所もチラホラ目につき、改めて観ると脚本がちょっと雑な感じがします。ですがディック原作映画らしい「何を信用すればいいのか?」「誰を信頼すればいいのか?」というような要素を基本としてハラハラ・ワクワクさせてくれるSFサスペンススリラーに仕上がっております。 映画のタイトルにもなっている「スクリーマー」は「連合」が5年前に戦争に投入した殺戮防衛兵器です。 その非人道性には「連合」側の兵士も目を背ける程ですが、厄介なことにこの「スクリーマー」の基本的な行動原理が「生命体を抹殺する」であるため、攻撃対象には「連合」側の人間も含まれているのです。そのため「連合」の兵士たちは「タブ」と呼ばれる装置を手首に着けて「スクリーマー」に自分は攻撃対象ではないと認識させています。と云う、とんでもない危険な代物なのですが、更に最悪なのがこの「スクリーマー」は最初に「連合」の開発班が送ってきて地下に設置したきり、後は自動で勝手に活動しているため、実際の戦場にいる「連合」の兵士たちは「スクリーマー」の操作も制御もできていないうえ、「スクリーマー」が地下で何をしているのか観測することもできていません! 回収してきた「スクリーマー」の残骸を調べて、「スクリーマー」が自分で自分を大量生産し、改良を重ねてより高度な機能を有するようになってきているという事が漠然と分かっているだけです。 また物語の舞台である惑星シリウスは放射能に汚染されていますが、主人公たちは特に防護服なども着ないで外を歩きます。赤いタバコを吸うことで中和されるとのことなのですが、何故、それで中和されるのかは誰も知りません。しかし実際それで死なないから効果あるんだろう程度の認識です。 これらは想像上のお話ではあるのですが、この「なぜそうなるかは知らないが、そうなるから使う」って本当に身近な事に感じるのです。 スマートフォンやパソコン、インターネットや5G等々、文明の利器の多くの原理を私はまったく理解していません!基本的に新しいものに懐疑的なくせに、気づけばよく理解しないうちに時代に流されるままそれらを手にし、何となく使い続けています。 さらに、『腸内環境を整えると精神的にも健康になれるよ!』っと聞きかじった知識を妄信し、毎晩納豆を食べ(ヤクルトは高価なので)ピルクルを飲み、それで何となく『今日も調子いいわ!』となっているような、ものすっごい浅いSFファンです。 なのでよくわからない事への不安はあるものの結局それを使っているという状況にすごく共感してしまうのです。 また、この映画で戦争している「連合」と「NEB」の2勢力の司令本部は共に地球にあります。そしてその地球では実際の戦闘行為は行われておらず冷戦状態であり、実際の凄惨な戦闘は惑星シリウスでのみで行われています。 和平協定のために惑星シリウスの「NEB」司令部を目指す主人公が道中、「NEB」の核攻撃で廃墟と化した街を訪れます。かつてそこに住んでいた民間人に思いを馳せ、主人公は「彼らは我々が出した犠牲者だ」と言います。惑星シリウスに来たばかりの若い兵士はその言葉の意味がよく分かりません。「核兵器を使ったのは「NEB」でしょ?」という具合ですが、主人公は若い兵士を諭します。「お前は自分が正義だと誰かに吹き込まれて戦場へ送られてきたんだろう?」と。 戦争を主導し、その大義を戦う兵士に吹き込むのは安全圏にいる司令本部なのです。何か大きな脅威に対抗するために大多数の意思統一を図る目的で大義が必要なこともあるとは思います。しかしそれは誰かの私利私欲を昇華させるために容易に悪用できてしまう危険性があり、その犠牲は結局そんな大義に賛同していないどころか、知りもしないような人々をも巻き込んでしまうものです。 昨今の世界で起こっている(もしかしたら有史以前からずっと続いている)戦争や紛争、またはそれらへ発展しそうな国家間の衝突を見るに、この映画で描かれる世界の状況はただの作り話として済ませられない生々しさを感じさせます。 また映画には今から見ればディープフェイクを思わせるホログラム通信の描写や、VRゴーグルでポルノ鑑賞というシーンが出てきます。 そういう風に一見荒唐無稽なお話の中に現実社会に対する警鐘を鳴らしたり、未来予想をしてみせるSFというジャンルが、私は大好きなのです。 最後に、この映画の特殊効果は模型などによる従来型特撮が6、CGが4ぐらいの割合です。 CGの出来は今見ると、ツルツルの質感で描写される物体がプレステ1の頃のゲームを想起させ、パッキパキに浮いたデジタル合成が初期の平成仮面ライダーシリーズを思い出させてなかなかキツいのですが、その一方でなんだか味が出てきたように感じます。 特殊効果技術って時代が流れるにつれて、すごい!→ショボい!→味がある…。という印象に変わっていくと思うのですが、着ぐるみや模型に味を感じても、CGに味を感じることはないだろうと思っていただけに自分自身ちょっと意外な驚きでした。 まぁ世に出てから一貫して『すごい!』の印象が変わらない初代「ゴジラ」や「大魔神」、「ターミネーター2」の様な作品もありますが、これから過去作を見るときの楽しみが一つ増えたような気がしますので、そういう当時の特殊効果を今どう感じるかを確かめるのにもお勧めの1本です。(脚本は少し雑ですが…)

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モアイ

3.0P.K.ディックらしいとは言えるか

2022年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ディックとしてはちょっとしたアイデアの短編を映画に膨らませた、ってわけですね。 雑な造りな感じはしたけどピーター・ウェラーはかっこよかったしジェニファー・ルービンが綺麗だったのでちょっと甘め。

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arlecchino

4.0classicalSFの秀作

2022年1月28日
iPhoneアプリから投稿

何重にも張られたストーリーの仕掛けは秀逸でした。 とても面白かったです。

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tuna

2.5そっくりさん

2022年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ある惑星の戦争を終わらせるため派遣された主人公(ピーター・ウェラー)、基地に到着して驚いたのは自分たちが開発した兵器に攻撃されていること。 「砂の惑星」を単純化したような話。

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いやよセブン