白い恐怖

劇場公開日:

解説

アルフレッド・ヒッチコックが「汚名」(46)に先立って監督した1945年度スリラー映画。フランシス・ビーディングの原作を「汚名」と同じくベン・ヘクトが脚色した。撮影は「船乗りシンバッドの冒険」のジョージ・バーンズ、音楽はこの作品でオスカーを得たミクロス・ローザ担当。夢の場面装置はシュル・レアリスト、サルヴァドル・ダリ、主演は「ジャンヌ・ダーク」のイングリッド・バーグマンと「白昼の決闘」のグレゴリイ・ペックで、「夢の宮廷」のロンダ・フレミング、「Gメン対間諜」のレオ・G・キャロル、ロシア出身の老優マイケル・チェホフ、「死の谷」のヴィクター・キリアン、ビル・グッドウィンらが助演する。

1945年製作/111分/アメリカ
原題または英題:Spellbound
配給:SRO=東宝
劇場公開日:1951年11月23日

ストーリー

長年精神病治療院「緑の園」の所長だったマアチソン博士が更迭され、新所長としてエドワァズ博士を迎えることになった。ただ1人の女医コンスタンス・ピイタアゼン博士は、美人だが研究一徹で、同僚の求愛にも見向きもしない性格だった。だが治療院にやってきたエドワァズ博士を名乗る若い男にコンスタンスは一目惚れをしてしまう。ところが、食事しながら彼女が計画中のプールの略図をフォークの先で白いテーブルクロスに描いた途端彼の様子が変になる。その場は何事も無く収まり二人は急速に愛情を深める。夜更けに眠れぬコンスタンスは、図書室に本を取りに行くが、その途中でエドワァズの部屋に立ち寄り彼と抱き合う。その時彼女の部屋着の白地と縞に気付いた彼はまたしても荒々しい態度を取るのだった。そこへ患者のひとりが自殺を図ったと連絡が入る。エドワァズは手術室に駆けつけるも、その場に卒倒してしまう。コンスタンスはエドワァズの本の署名と彼がよこした手紙の署名が異なることに気付く。彼のシガレット・ケースにはJ.B.の頭文字が入っていた。エドワァズ博士を名乗る「男」は、自分はきっとJ.B.の頭文字を持つ男で本物のエドワァズ博士を殺して身代わりとなってここに来たんだろうと言い出し、そして逃亡する。コンスタンスはJ.B.が残した手紙から、彼がエンパイア・ステイツ・ホテルに身を隠していることを知り、ホテルに駆けつける。J.B.の手には火傷の痕があり、それが彼の記憶喪失症の原因を解き明かすと確信したコンスタンスは、J.B.を連れ恩師の精神分析学者ブルロフ博士を訪ねる。途中再び発作を起こしたJ.B.は空中戦闘のことを口走る。彼はロオの上空の空中戦で負傷し、記憶喪失症になったのだった。ブルロフ博士に夫だと紹介するコンスタンス。二人はブルロフ博士の家に泊まることとなる。その夜ブルロフ博士の家にある様々な「白」により、再び発作を起こしそうになるJ.B.。翌朝ブルロフ博士はJ.B.の治療を試みる。その結果彼の恐怖は雪とスキーに関係があると判る。事件が起きた場所がゲイブリエル・ヴァリイだと知ったコンスタンスとJ.B.はそこに向かう。目的地に着いた二人はスキーを始める。滑走中J.B.は全てを思い出す。自分の名前は「ジョン・バリントン」であること。子供の頃不注意で弟を滑落死させてしまった罪に苛まれていたこと。エドワァズ博士は彼の記憶喪失症を直すために一緒にスキーをしてる時断崖から落ちて死んだことを。ところが、この報告に従って断崖を調べた警察はエドワァズ博士の遺体から銃弾を発見する。殺人嫌疑で逮捕されるジョン。「緑の園」に帰ったコンスタンスは、初めてジョンがこの医院にやってきた時に、マアチソン博士がエドワァズ博士と旧知なのにジョンをエドワァズ博士として扱ったことに気付く。更迭を恨んだマアチソンが新任のエドワァズを殺害したのだった。コンスタンスに詰問されたマアチソンはもはや逃れられぬと悟り自殺する。無実となったジョンとコンスタンスは新婚旅行に出かけるのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第18回 アカデミー賞(1946年)

受賞

作曲賞(ドラマ/コメディ) ミクロス・ローザ

ノミネート

作品賞  
監督賞 アルフレッド・ヒッチコック
助演男優賞 マイケル・チェホフ
撮影賞(白黒) ジョージ・バーンズ
特殊効果賞  
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映画レビュー

3.5イングリット・バーグマンとグレゴリー・ペックの美しさを堪能する。

2024年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1945年作品で公開は1951年とか。
アルフレッド・ヒッチコック監督のサイコスリラー。
精神科医のコンスタンス(イングリット・バーグマン)の病院に
新しい院長として赴任してきたエドワーズ博士(グレゴリー・ペック)
彼はエドワーズを語った偽物で、早々にニューヨークに逃げていまう。
彼には記憶喪失があり、なぜエドワーズが行方不明になり、
彼が成りすますのか?
エドワースは生きているのか?
それをコンスタンス医師が紐解いてゆく話し。

一目でグレゴリー・ペックに心を奪われるバーグマンが本当に
美しい。
精神分析で過去のトラウマを解いて事件を解決に導くのだけれ、
おおよそ説得力のない話し。
白いシーツに走る黒い線が怖い・・・・
それは白い雪に走る黒いスキーの黒いシュプールで、それを怖がる。
それは幼い日に弟が一緒にスキーをしていて崖から転落死していて、
自分が押して落としたと、思い込み罪の意識に苛まれている・・・

そして何十年後に親友とスキーをしていて崖から突き落とした・・・と、
思い込み記憶喪失になる???
記憶喪失なのに親友に成りすますのか・・・などなど、
無茶くつゃでございます。
そして都合よく後付け的に真犯人が現れる。

サイコな主人公なら1964年作の「マーニー」のティピ・ヘドレンは
正真正銘のサイコパスで、これはかなり現代にも通用する話し。

この映画はあくまでもイングリットとグレゴリーのラブロマンスと
美しさを堪能する映画だと思います。
雰囲気と後味は上々です。

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琥珀糖

3.0あまりビックリするラストではなかった

2024年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ヒッチコック監督の推理モノ。
イングリッド・バーグマンとグレゴリー・ペック共演の作品。
会話が途切れることなく展開がスピーディで
時間があっという間に過ぎる感じです。
何と言っても美男・美女の二人。
惚れ惚れします。
ヒッチコック作品の割にはあまりビックリするラストではない。
残念ながらどんでん返しは小さかった。

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tom

3.5何とも乱暴なエクスポージャー(曝露療法)!

2024年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

知的

萌える

こんな風に、急激に強引にやったら悪化すること必須!!!
でも、サスペンス/映画としては、ぐいぐい押してきて面白い。

記憶喪失の男の真実を探す物語。
しかも、男は殺人を犯したという。
男を愛した女は、それを信じず、妄想に取りつかれているのだという。

果たして、男の思い込みか?女の狂信的願望か?

精神病院で、父を殺したと思い込んでいる男の顛末を前半に入れ込み、不安を煽る。
剃刀で喉を掻っ切った精神病院に入院している、父を殺したと言う男。
 だから、後半、JBが剃刀をもって、階下に行くシーンでは、その演出・映像と相まって、緊張感が半端ない。
 そんなJBの先、階下にいるのは、何も気が付いていないかのような、好々爺・老精神分析医ブルロフ博士。
 父を殺したと思い込んでいる患者の主治医が、男の無実を狂信的に信じている女・コンスタンスであることもミソ。この患者の訴えも「思い込み」と映画の中で言われるだけで、父は実は存命なのか、亡くなっているにしろ死因は語られていない。
 コンスタンスの誤認かもしれない可能性もなくはない。
 そして、コップを通した映像。幻の演出?と思わせて…。

一夜明けて、明かされるブルロフ博士の行動理由。さすが、経験豊富な老練な精神分析医だ!
 「女は、恋する前は優秀な精神分析医だが、恋した後は患者となる。(思い出し引用)」とは、コンスタンスに言う、ブルロフ博士の言葉。女だけじゃなくて、男も同じと思うが、コンスタンスの状態を表現するのに、ぴったり。
 ブルロフ博士が、一貫して、コンスタンスのスーパーバイザーの役を果たす。
 だが、コンスタンスには通じない。頭ではもちろん理解しているのだが、心がどうにも動かない。その、知と情熱に揺れ動くさまを、バーグマンさんが見ごとに演じている。だから、見ている私としては、ハラハラし、でも応援したくなる。

JB演じるペック氏は、どこか、浮ついてきょどきょどしていて、かと思うと、コンスタンスに強引にアプローチしたりして、精神不安定な男を演じている。かの有名な『ローマの休日』の時より、青臭いの新鮮。

正直、期待したダリ氏の夢の部分は、今となったら、特に目新しいものではない。20分あった映像をあの部分しか使わなかったと聞く。20分全編を見てみたい。

それより、上記のコップを通した映像や、後半、収監されたJBを心配するコンスタンスの映像とか、シーン・シーンで唸る映像が多い。

推理ものとして見ると、つっこみどころ一杯ではあるが、恋する女の一途さと相まって、最後まで予断を許さず、見せてくれる。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

精神分析。
 Freudが初めた治療法。ユング等ヨーロッパ各国から熱心に教えを乞うた医者もいるが、どちらかと言うと、初期は芸術関係者に受け入れられていた。
 ナチスの台頭により、ユダヤ人だったFreudはイギリスに逃れ、ある精神科医たちはUSAに逃れ、一時期、USAでの、精神病治療は精神分析一辺倒だったと聞く。
 基本、毎日、分析を受けに行かなければならず、時間とお金を必要とする治療であって、それだけの余裕を持つ者として、精神分析を受けることが、ある意味、ステイタスとなっていたとも聞く。

今では、認知行動療法の一つとして説明されるエクスポージャー(曝露療法)。
 精神分析の初期にはこんなやり方をしていたのかな?
 エクスポージャーとは、恐怖の対象に現実に向き合う方法だが、実際の治療では、患者本人がある程度耐えられるところから徐々に始めると聞く。そして、安心・安全を確実に担保してから、最も克服しなければいけない危険に向き合うと聞く。この映画のような強引かつ急激な方法をとったら、再トラウマ決定。

また、夢分析もこんなに単純ではない。
 夢分析は、Freudから分かれたユングの方がさらに発展させているように聞くけれど…。
 そもそも、夢も幾つもの層があり(『インセプション』ほど作為的ではないか、何か:出来事や感情の侵入によって変化することもある)、意味づけも夢占いのように1対1ではなくて、”個人”の意味づけも重要なのだが。

ブルロフ博士の説明等、簡潔に精神分析を説明している部分もあるが、
治療としては、そりゃまずいということも多々ある。
 特に、時折、JBが治療を拒否して喚き散らす言葉は、精神分析を学び始めの治療者が犯すミスに対して、患者が文句を言うことそのままで、笑ってしまった。
 Freud等の理論は、不可解なことが解ったような気がして、つい、その理論を押し付けたくなるんだな。「解る」ことを重要視する現代では、特に。
 そして、無意識にでも忘れたくなるようなことを思い出させるって、傷口に指を突っ込んでぐりぐりするのと同じ。そんなサド的行為を強要されたら、噛みつきたくなるよ。それでも、それをすることで困っていることが解消するから”治療”として成り立っているのだけれど、だからこそ、慎重にしなければいけないのだが。

そして、倫理の問題。
 精神分析の初期には、教育分析(コンスタンスが精神分析医になるために受けた分析)で、分析した者と、分析された人が結婚したケースもあるが、うまくいかなかった。
 そんな失敗を重ねて、心理療法、特に精神分析には”やってはいけない”とされているタブーが多い。
 例えば、面接室以外で会うなんて、そうしたとたん、「それは精神分析ではない」と言われてしまう。
 臨床心理士・公認心理師の倫理綱領に照らし合わせれば、恋人関係と治療関係は、”二重関係”に当たり、認められない。

だから、この映画では、コンスタンスが、精神分析医としてJBをというより、愛の力がという印象が強い。そして、理性では迷いながらも、愛の力でぐいぐい突き進むコンスタンスのなんと凛々しいことよ。
 加えて、精神分析治療としても突っ込みどころ満載だが、その知識で次々と謎が会召されていくので、爽快。

精神分析医やカウンセラー、精神科に携わる者は、JBのコンスタンスへの不満にこそ、耳を傾けるべきだと思う。

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とみいじょん

3.0映画終活シリーズ

2024年4月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1945年作品
「カサブランカ」でのバーグマンの美しさに魅了され鑑賞
ヒッチコック作品にしては、淡白な結末

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あきちゃん