「何十年かぶりに見直してみて」処女の泉 ゆみくらさんの映画レビュー(感想・評価)
何十年かぶりに見直してみて
最近レンタルも難しくなっているらしく、もしかしたらもう観る機会はないかもしれない…ということで行ってきたベルイマン3大傑作選。2013年デジタルリマスター版にてどどんとリバイバル上映である。
『処女の泉』は、その昔まだコーコーセーだったころ、衛星放送かなんかで観たことがあった。件のレ○プシーンに、古い映画ってここまでやるんじゃ…とおののいた記憶があった。
そうして今回ウン十年ぶりかに観直したわけだが、このムスメさんがどういう末路をたどるか知ってるせいなのかそうじゃないのか、画面から伝わってくる緊迫感が半端ない。父親役のマックス・フォン・シドーの重厚すぎる存在感ゆえだろうか。かっこよすぎる。
時代背景も中世あたりなのに、現代に通ずるテーマでもあるからなのか、目の前で展開されるストーリーやセリフ運びなどにも古臭さを少しも感じさせず、とても60年近く前に作られた映画とは思えない。これが名画と言われる所以なんだろうか。
さて問題のシーンは…記憶の中よりも意外なまでにあっさりといっちゃいけないがさっくり終わってしまった感が。あれ?こんなだったか。もうちょっとエグかったような…だけど、そのえ?と思うような一瞬さが、少女にいきなり降りかかった災厄っぷりを一層際立たせ、さらには殴り殺されてしまい、なにもそこまでしなくても…といった絶望感に観客を一気に取り込む。そして後半、娘に起こった悲劇を知った父親の怒涛のような復讐劇へとなだれこんでいく。
しかし、純真無垢、可憐、罪なき乙女に起こった悲劇といろんな解説に書いてあるが、このムスメ、実は単にアタマがあまりよくなかっただけでは…あんな山奥で蝶よ花よと育てられればいたしかたないのか。よく言えば世間知らずということか。さらに若干だがイラっとさせるような言動が多く、よく言えば天真爛漫、悪く言えば空気読めや。召使いが呪いたくなるのもなんとなくわからんでもなかった。
上映中ラスト、娘の遺体を発見した父親が神への慟哭を吐露する超クライマックスシーンにもかかわらず、いきなりぷつっと画面が真っ白けに。「SDカードが差し込まれてませ〜ん」というメッセージが。。5分くらいして再開したけどねえ〜。感動が…帰りオジサンがスタッフに文句言っていたけど。やっぱり、映画は多少ブツブツっと画面や音がとぎれてもカタカタフィルムのほうが味があっていい。