「人間の欲望こそ最も恐ろしいというテーマを40年以上前に描いた不朽の名作」食人族 南風さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の欲望こそ最も恐ろしいというテーマを40年以上前に描いた不朽の名作
4Kリマスター版で今回初めて見る機会を得たので、映画史上最大の問題作とのワードに興味をひかれ、怖いもの見たさで鑑賞。
数々の残虐シーンや動物虐待と言われるシーン、内臓オンパレードなグロテスク映像が多いので決してオススメできる映画ではありませんが、意外や意外、40年前の作品とは思えないほど見応えがあり、名作と言って差し支えのない作品でした。
食人の慣習があるとされる南米アマゾンの未開部族を取材に行き、行方不明になったアメリカ人撮影班の4人を、依頼を受けた大学教授が探しに行くのが前半。
行方不明になった4人の死体&撮影されたフィルムを発見し、そこに記録されていた驚くべき内容が明らかになっていく、というのが後半。
…フィルムに記録されていた映像から実は撮影班の4人組が現地の部族に対し、センセーショナルな映像を撮るために意図的に暴力、放火、虐殺、現地女性への暴行など蛮行を重ね、その復讐に全員が殺された、というのが真実。
フィルムを見終わった教授の、
「食人族は誰なんだ」
という問いかけを残して終わるわけですが、この一連の流れとモキュメンタリーとしての構成が時代的な古さを全く感じさせない見事なもので、グロテスクなシーンが多い作品でありながら美しいBGMと高いメッセージ性からただのB級グロ映画とは一線を画しています。
撮影班を探しにアマゾンを進んだ教授が現地の人々の文化や人権を尊重した行動から信頼を得たように、本作で食人族とされている部族は決して問答無用で他者を襲うような人々でなく、むしろその前に撮影班の蛮行に遭った事実を鑑みれば信じられないほど善良です。
一方、文明社会の人間でありながら撮影した映像で自分たちが有名になる(金を得る)為に犯した撮影班の悪事蛮行は、
・村人の貴重な食糧である豚を「弱肉強食だ」と勝手に撃ち殺す。
・部族間の抗争を演出する為に村を放火し、生きたまま焼き殺す。
・自分たちのセックスシーンを見せつける。
・現地の女性を複数で暴行する。
・暴行した女性を、純潔を重んじる現地の慣習(罰)の演出として、殺害して串刺しにし撮影する。
※本作でもっとも有名な映像シーンで、直接撮影班が手を下す様子は描かれていませんが、彼らの会話と一連の行動から明らかです。
と、枚挙に暇がありません。
最後の教授の「食人族は誰なんだ」のセリフについ「ホントだよ!」と思ってしまいましたが、このセリフ(字幕)は、リマスター版以前だと「食人族はどっちなんだ」というような字幕だったそうです。
英語に疎い為、どちらが元のセリフの意味に近いかは分かりかねますが、本作の時代的にとにかくショッキングでグロテスクな映像作品がウケていて、作中で動物を殺して食べるシーンなどは実際にその動物を殺した映像がそのまま使われていたり、劇中作として出る撮影班の過去作品の死刑シーンは本物の死刑映像が使われています。
そんなシーンがふんだんに出てくる映画を見たい観客(自分)、それを作る側、そして本作(食人族)で描かれる登場人物達…
食人族は誰なんでしょうね。