劇場公開日 2025年1月10日

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「「サメ映画」の原点にして、頂点。」ジョーズ しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「サメ映画」の原点にして、頂点。

2025年1月15日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

誰もが名前くらいは聞いたことがあるだろう、スピルバーグ監督の「ジョーズ」。USJのアトラクションでも馴染み深い。幼少期この映画を観て大いに恐怖した私としては観ない訳にはいかないと、普段よりも少々高いIMAX料金を支払い劇場へと赴いた訳だが……その料金など気にもならない程の良作であった。

海水浴場が人気の避暑地、アミティ島。シーズンも近づき俄に町が賑わってきた頃、砂浜に女性の遺体が流れ着く。その知らせを受けた警察署のブロディ署長は、遺体の状態から「サメの仕業ではないか」と推測。市長に海水浴場の閉鎖を進言するが、市長は町の賑わいの為取り合わなかった。それが惨劇の始まりになるとも知らずに…。

大人になってからこの映画を久々に観て思ったが、ストーリーの運びに一切無駄が無い。
田舎町にサメが現れ惨劇が起こる。小難しい展開もまるで無く、ストーリーはこの1行で纏められてしまうレベルにシンプルだ。恋愛要素なども殆ど無く、ノイズになりうる物が極限まで削ぎ落とされている。
ストーリーだけで言えばこれほどまでにシンプルなのにもかかわらず世界中で愛され続けている理由の一つは、他の追随を許さないその演出力にある。
サメの全貌は終盤までまるで映らない。だがサメ目線であろう水中からのショット、水面から少しだけ見える背ビレ、紅く染まっていく海といった演出。それら全てがサメの存在を観客に想起させ、恐怖を煽る。スピルバーグ監督がこだわったという本物の海での撮影も臨場感を高めている。

恐怖演出においては、緊張と緩和の使い方が実に見事だ。ジョークなどが飛び交い、和やかな雰囲気に一息ついているところに、それを一気にひっくり返すサメの恐怖。ただジャンプスケアを使うだけではなく、後ろからサメが迫って来るなど、様々な脅かし方が観客を飽きさせない。

CGが無い時代だからこその、手作りの暖かみも細部に感じられる。サメに食べられた遺体や切断された足といった造形物は殆ど大写しにされず、一瞬の演出などに使われる事が多い。故に「作り物感」が抑えられ、観客の恐怖を煽るのだ。
ロボットを使ったサメの撮り方も良い。のたうち回るサメを水中からアオリで撮るカットなどは、動きが非常に滑らかで「本物のサメを使ったのか?」と思うほどだった。ロボットが撮影の途中で故障したという裏話を聞いた事があるが、それもまるで感じさせない。

そして何より、そうした素晴らしい演出にさらなるパワーを与えているのが、ジョン・ウィリアムズ氏作曲の音楽だ。
効果的に不協和音の使われた、誰もが聞いたことのあるテーマ曲。フレーズが少し流れるだけで、サメがやって来た事が分かってしまう。なんというアイコニックで、かつ恐ろしい音楽だろうか。

今年50周年を迎えるにもかかわらず、今観ても全く古さを感じない新鮮な恐怖。映画好きを名乗るなら必ず押さえておきたい、必見の名作だ。

しゅわとろん