「アンディがレッドに贈る玉手箱」ショーシャンクの空に マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
アンディがレッドに贈る玉手箱
評価の高い作品として気になっていたが、なかなか見る機会がなく、やっとBlu-rayで鑑賞した。
20年もの投獄生活を、いくつかのエピソードを紡ぎながら描いていく。
それぞれのエピソードに適したカメラワークと編集が上手い。
また、アンディと交流を深めていく調達屋のレッド(モーガン・フリーマン)によるナレーションが効果的だ。
物語の軸としては、アンディとレッドの友情物語だが、終盤まではそれぞれが独立したエピソードが多い。これは語り手のレッドにとってアンディは、ほかの服役囚とは異質の不思議な存在であり、最後までアンディの真意が掴めなかったからだ。
レッドからみて『今にして思えば』という語り口なのだ。
アンディは、刑務所の中で図書館を開設したり、刑務官のために減税の便宜を図ったりしながら、徐々に仲間からも刑務官からも信頼を得ていく。
暴れることもなく口答えすることもない日々を淡々とこなすアンディ。
目はいつも遠くを見つめ、ものを言うときは静かに口を開く。その目は知的で、唇の端に意志の強さを滲ませるアンディにティム・ロビンスがぴったりハマる。あまりのハマり具合に、この人はこの役を演じるためだけに生まれてきたのではないか、そう思ってしまうほどだ。
物静かに獄中生活を送るアンディだが、内に秘めた闘志と決意は並大抵のものではない。冤罪で投獄され、どんなに模範囚であろうと、生きているうちに出られる保証などどこにも無い。それでも希望を捨てず、自由を勝ち取ろうとする意志の強さを彼は持ち続けていたのだ。誰がどう判断しようが、身の潔白は自分にしか分からない。いわば人間の尊厳を掛けた小さなひとつひとつの積み重ねが顕わになったとき、その信念の凄さに感服する。
年上のレッドは、10年毎に仮出所の審査を受ける。審査官に対して、出たい一心のアピールに終始してきたレッドの答弁が変化する。長い服役の中で、自分が犯した罪を考え続け、自身の存在価値を問うようになる。
やっと仮出所可のスタンプを得たとしても、数十年の間にまるで変わってしまった社会に馴染めず、自らの命を断ってしまう仲間もいる。
40年服役して仮出所となったレッドも社会に馴染めず、そんな仲間と同じ道を歩みそうになるが、もし仮出所になったら行ってみろというアンディの言葉を思い出す。
その地、バクストンにはいったい何が隠されているのか。本当はアンディがやはり真犯人で、その証拠でも隠していたのではないかなどと思いを巡らす。
目的の場所を探し当てたレッドが、伸び上がってあたりを警戒しながら箱を開ける仕草が印象的だ。
小箱はレッドにとってどんな玉手箱になるのか、アンディの友人への想いが溢れたいいラストだ。