「劇場では、コネを使って検閲を通した戯曲を上映していて、その地下には...」終電車 imymayさんの映画レビュー(感想・評価)
劇場では、コネを使って検閲を通した戯曲を上映していて、その地下には...
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劇場では、コネを使って検閲を通した戯曲を上映していて、その地下にはユダヤ人の夫を隠している。たくさんの人が見ることのできないはずだった劇を見にくるし、夜中には地下に隠れていた夫は一階まで上がってくることもある。この劇場は基本的には不可視の性質を持ちつつ、時に可視に揺らめく、そんな空間だ。
そういうわけで、この劇場をめぐる物語は、権力だとか欲望だとか名声だとかが張り詰めたようにぎりぎりのバランスだ。すこしでもそのバランスが崩れたならば、夫は見つかって殺されるだろうし、劇場はナチスに奪われてしまうだろう。
女主人は、主人公を演じる男に惹かれていくのだけれど、その恋愛の均衡もどきどきしてしまう。カーテンコールの合間に突然キスをするのだけれど、一瞬間でもタイミングがずれれば、たちまちにスキャンダルだ、
この映画のタイトルは「終電車」、間に合うか間に合わないか、あのぎりぎりのタイミングによって運命を分けられたときに、前者と後者ではまったく違う物語になってしまう、この物語は、あらゆる局面で「終電車」的状況に陥る、なんどでも、主人公たちといっしょにどきどきしながら見たい、
2人の恋の行方がとても気になるのだけれど、戦争後のふたりの姿は恋人関係にある劇中劇のなかでしか見ることができないから、ほんとうのことはわからない。演劇世界と現実世界もまた絶妙なバランス、で保たれているのだ、
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