「モノクローム時代の大傑作」市民ケーン かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
モノクローム時代の大傑作
オーソン・ウェルズ主演脚本監督作。
【ストーリー】
メディア王チャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)が、ザナドゥ城と呼ばれた自らの邸宅で死んだ。
スノードームを手に、たった一言「バラのつぼみ」と言い遺して。
その言葉の謎を解くべく、ニュース映画の編集者ジェリー・トンプスンはケーンの過去を暴きにかかるのだが、浮かび上がるのは、空虚で悪趣味な邸宅にこもる、孤独な男の姿だった。
それは、かつて栄華をほこったメディア王のイメージとは、大きくかけ離れたものであった。
シミケンこと市民ケーンです。
主演脚本監督すべてを手がけたオーソン・ウェルズの事をほぼほぼ知らずに鑑賞しましたが、これが面白いのなんの。
場面をいろんなアングルから撮影し、カメラを自由に動かし多彩な演出を展開しつつ、白黒なのにレイアウトも分かりやすく工夫されているので、退屈せず理解もしやすく作られております。
この人、映像作家としても優秀なんだなと。
英語教材『家出のドリッピー』が代表作じゃなかった。当たり前だ。
かなり興味をかきたてられてWikipediaの記事を読んで、この映画への評価の不遇さに腹を立てるも、そこからさらにオーソン・ウェルズを調べてダメだコリャと笑ってしまいました。
なんというか、天性のエンターテイナーで稀代の詐欺師ですね。
初ステージに上がったエピソードもそうですが、あっさりと人気者になって都会に移り、この映画を撮るまでの経緯も破天荒で、どんだけ無茶するんだこの人と。
この映画も、当時のメディア王ウィリアム・ランドルフ・ハーストを思いっきりモデルにして、最期を孤独に終わらせるとか、そりゃ激怒されますわ。
個人的な感想としては、ハーストを悪く描いたとは思いません。
ハーストって人はこんなもんじゃない、自分のメディアで酷いことしでかしまくった超悪党ですから。
ぴっちり2時間の長編ですが、それに堪えうる画面づくりで退屈を吹き飛ばしてくれる一大ドラマ。
空き時間に流し見するつもりでしたけど、Amazonプライムでは吹き替えがなくて、結局ガッツリ世界観に取りこまれてしまいました。
映画に浸りたい休日前の夜に、ピッタリの一本ですよ。
結局この作品でオーソン・ウェルズが取り入れた数々の映画技法は、今では一般的になってしまっています‼️やはりこの映画は物語ですよね‼️すべてを手に入れた新聞王が全てを失い、最後に思いを馳せるのは母との思い出‼️深いですね‼️
共感とコメントをありがとうございました。
ハーバード・ウェルズ作SF小説『宇宙戦争』から着想を得てラジオ番組『宇宙戦争 (ラジオ)』を制作・放送した際、オーソン・ウェルズ氏の迫真の演技に、視聴者が本当に火星人が来たと思って集団パニックを引き起こしたと噂された、
本当に「天性のエンターテイナーで稀代の詐欺師ですね。(かせさんさんのコメントから引用)」
ラジオ放送によるパニックも、その後”なかった”という調査も発表され、噂も誰がどんなふうに流したのかとか興味が尽きないです。
かせさんさん、共感とコメントありがとうございます。
オーソン・ウェルズはハリウッド全盛期の1940年代から1950年代にあって最も異端で異彩を放った監督と思います。私は19歳の時に観て、ルノワールの「大いなる幻影」やチャップリンの「街の灯」と並んで衝撃を受けました。カメラ移動を駆使し構図に拘った独特なカメラワークの完成度の高さ、それにより主人公ケーンの人物像が浮き彫りになる演出法は、回顧話法の謎解きと相俟ってとてもミステリアスです。カメラワークの斬新さはエイゼンシュタインに並びますね。撮影と編集に加えて美術のスケール感と豪華さも見応えあり、今回見直して感激を新たにしました。それとヒッチコックの「めまい」「サイコ」「鳥」などを担当したバーナード・ハーマンの音楽も控えめながら、場面にあった多彩な曲を披露しています。
美術品の病的な蒐集の趣味は一種のマーキングで、寂しさと自己存在の自信の無さが表れていると見ました。ケーンの本音が分からず、“薔薇の蕾”のたった一つの言葉がこの映画を表す。巧妙な構成のユニーク且つ大胆な傑作ですね。