「映像技術を極めた映画遺産の是非」市民ケーン Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
映像技術を極めた映画遺産の是非
”独創的な回顧の話術と全焦点撮影の持続的演出”(飯島正氏)の形式で構築されたオーソン・ウェルズ監督の強固で大胆な映画遺産。”現在ではもう消化されつくして目にもつかない”(同)が”オリジンの状態で探ってみる”(同)意義は大きいと思う。驚嘆すべきは、冒頭の報道フィルムのモンタージュ表現と編集力の素晴らしさ。英語の持つリズミカルでテンポ感あるナレーションの語調が、そのまま映像の流れに融合した感覚の鋭敏さ。「怒りの葡萄」の名匠グレッグ・トーランドの撮影、「ウエストサイド物語」の巨匠ロバート・ワイズの編集と、超一流のスタッフが25歳の魔人オーソン・ウェルズを支え映画技法を極める。
ある新聞王の生涯を追跡する使者は、彼の謎の遺言”バラのつぼみ”を解明出来ずに終わる。だが、映画は観客には暗示的に教えてくれる。富と名声を享受した偉人の満たされぬ愛の彷徨を衝いた劇的手法にある、単純で明快な人間洞察の結末をどう評価しよう。内容と表現の勝敗は明らかだ。余りにも表現が優れている。
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かせさんさんのコメント
2023年10月25日
ケーンが自分を誇大に見せたがること、家族を過剰に欲しがること、そして願い叶わず孤独な死を遂げたこと。
オーソン・ウェルズは繰り返し内面の空疎さを痛いほど見せつけてきましたね。
カメラワークだけでなく、ストーリーの語り方もまあ上手いし巧いし旨いという、当時としては斬新かつ贅沢なコース料理だったんだろうなあと感動しました。
かせさんさんのコメント
2023年10月25日
確かに、同時代の作品をちょっと見ておかないと、この作品の斬新性は理解できなかったかもしれません。
「退屈な場面なら、カメラ動かしゃいいんだよ!」という強固な意思は、庵野秀明あたりも受け継いでいるような。