「ジョーン・バエズの歌」死刑台のメロディ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョーン・バエズの歌
エンドロールで流れる "Here's to You" が頭から離れない。モリコーネの音楽とバエズによる詞と歌;「勝利への讃歌」という邦題は大袈裟でちょっと引いてしまうが、あまりの理不尽と差別に怒りでカッカした頭を冷やして休ませ、サッコとバートを愛おしく優しく包んでくれる。
サッコ=ヴァンゼッティ事件はアメリカ合衆国の裁判史上最悪の冤罪判決で世界各地で抗議運動が起こり批判されたらしい。バートが言ってたようにこんなことで有名になりたくなかったろう。仕事をして家庭があって友達がいて、戦争と柵がなくて幸福を独り占めにしない社会を作れたらと思っていただけだ。この映画が制作されたのがこの事件の50年後であることの意味も大きい。1968年の各国の学生運動、ベトナム戦争と反戦運動、価値観のひっくり返しと改革の気運のあった時期だ。一方で日本の学生運動は何を若い世代に繋げて行きたいと思ってくれたんだろう?
日本に生まれ育ち母語も日本語なのに職質される頻度が圧倒的に高いのが「外国人」という外見判断によるものだと最近知ってショックだった。この映画の裁判場面で頭にきて心が痛かったのは「英語もろくに話せないのに」「職を得て金儲けの為にアメリカに来たのか」「イタリア人は友達を大事にするからな」といった言葉だ。思想弾圧と移民・人種差別が荒れ狂った時代、それから100年以上たっても人間も社会も変わらない、と言いたくなってしまう。でもよくなっている部分があることにも目を向けたい、その程度には楽観的でありたい。
この映画を見ることができてよかった。「泣いても涙を無駄にするだけ」とサッコに言われるだろうから泣かないようにした。
おまけ
死刑を執行したマサチューセッツ州は1984年、死刑廃止の法案を成立させた。冤罪の可能性をゼロにすることはできない、殺人をする権限は国家にない、だから死刑は廃止して欲しいと思う。
この映画を観たのは50年以上前なので、あまり記憶がないのですがラストのジョーン・バエズの歌は良く覚えています。
今観ればまた、違う思いを抱くと思います。
talismanさん、コメントありがとうございます。半世紀以上前の作品なのに、最近作られたような感じがするのは、今でも世界は変わっていないと言うことですね。様々な価値観がごった煮の移民の国だからこそ、裁判で白黒はっきりつけるのがアメリカなのに。今も世界中にいるサッコとヴァンゼッティが1日も早く解放されてほしいです。
この映画の大事な所は彼等がコミュニストじゃないって事だと思います。日本に於ける大逆事件と同じです。イタリア移民の問題もあるでしょうが、国家権力の横暴。現在も残っているのが、怖いですね。
共感します。
観賞したのはいつだっけ?ぐらい昔なので詳細は覚えていませんが、なかなかショッキングだった印象があります。
死刑台のエレベーターはたぶんみたことないかな?という感じです。