死刑台のエレベーター(1958)のレビュー・感想・評価
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上手い!恋する「女」の一念を表すのにこれだけの御膳立てをするとは!
①やっと観ましたが、やはり世評に違わぬ傑作!淀川長治先生も言ってましたが、ルイ・マルはやはり早熟な天才ですね。
②ジャンヌ・モローのアップで始まり、ジャンヌ・モローのアップで終わる。打算も悪徳も越えて「恋」だけに生きる女を演じさせたらやはり右に出るものがないのも納得。全編殆ど笑わなくて(幸せそうに笑っているのはラストの写真の中でだけ)ムスッとしているのに、恋する女の情念はひしひしと伝わってくる。流石というか、見事です。
③モーリス・ロネもジャンヌ・モローが一途に愛する男にふさわしい色気を醸し出していて、こんなに男前だったのかと思うくらい。④やはり「恋」の映画を撮らせるとフランスは大人の国ですね。
⑤あまり人の批評に難癖をつけたくはないですが、低得点を付けた人たちは映画のことをわかっていませんね。映画は感じるもの。内容は二の次。それとも本当に狂うほど人を好きになったことがないのかな?
⑥担当刑事役、よく似てるなと思ったら、やっぱりリノ・バンチュラでした。ルイ役の俳優、『禁じられた遊び』のミッシェルだったとは!ジャン・クロード・ブリアリも端役で出てましたね。
⑧最近のダラダラと長い映画に比べ、この内容で92分とは!
こういう時代のこういう感じ、好きだなー。 サスペンスとして観てはい...
こういう時代のこういう感じ、好きだなー。
サスペンスとして観てはいけないんだなと、ここのレビューを見て改めて思った。
音楽と、主演女優の妖艶さがたまらなかった。
あとドイツ人のほうを殺した青年が単細胞というか、後先考えなさがものすごい(笑)。でもめちゃくちゃカッコいいから複雑な気持ちになるのも含めて、惹き込まれる良い作品。
映画でしか成しえない金字塔。
サスペンス映画ではありません。
ある女性二人の愛の軌跡を描いた映画。
年令も、境遇も違う二人。共通しているのは「離れ離れになるくらいなら死んだほうがまし」という想い。
主軸の、不倫カップル。
サスペンス的な要素はツッコミだらけなのだけれど、思いがあればということか…。
携帯電話がなかった頃はこうだったんだよなとやるせなくなる二人の逢瀬。
そこで、カララ夫人がとった行動。その様が忍びない。
不倫相手を疑い、でも信じたい。そのすがりつくような、錯綜する思い。
ドアマンが思わず傘を差しだすような上流階級然としたその有様が、
娼婦と間違われて警察連行になってしまう、そのなりふりのかまわなさ。
ー不倫をばらして回っているようなものだが、それすら気が付かないほどの狂おしい想い。
人を愛したことがあるのなら、失いかけた愛を追いかけたことがあるのなら、
フロランスのこの想いが身に染みるのではないだろうか。
とはいえ、こんなシーンを延々と見せられると、普通なら飽きてきてしまうが、
ジュリアンの場面、もう一組のカップルの場面を織り交ぜながらも、
モローさんの演技と映像の美しさで魅せ切る。
映画でしか表現できない珠玉のシーンだよなあと唸らされる。
ここでのフロランスの想いにどっぷりはまって迎えるラスト。
サスペンスの決着としてみるとツッコミどころ満載だが、
フロランスの愛の軌跡としてみると、胸が痛くなる。
企業スパイのようなことをしているのかと冒頭に思わされたジュリアンのカメラに残っていた写真。それが切なくて…。
フィルムで写真を写していた時代。現像液の中から浮かび上がるもの。
デジタル写真では味わえない間。
刑事のセリフ。
フロランスの独白。
その突き放したようなあっさりとした終わり方が余韻を残す。
ここも映画でしか表現できないシーンだなあと唸らされる。
そのフロランスと対比的に描かれるのが、もう一方のヒロイン・花屋の店員ベロニク。
恋人ルイに振り回され、犯罪に巻き込まれていく。
やんちゃなルイを思いやる姉のような存在。
大きな愛くるしい瞳が印象的。
愛ゆえに恋人を犯罪に駆り立てるフロランスとの対比が、一種の清涼剤。
でも、二人は基本同じ。恋人との幸せを夢見ていただけ。
穴だらけの計画。不用心すぎる振舞い。ここはジャングルではないんだぞ。
そして、何も考えていない、感情と欲望と、劣等感だけで突っ走るもう一つの犯罪。
だから、かえって、この話がどうなっていくのか、…糸の切れた凧?ねずみ花火?…。
ハラハラ。
取調室の演出も魅せる。
背景黒一色。まるで、舞台のような。地獄の一丁目のような。非現実さ。
そんな映像・演技を彩る音楽。マイルス・デイヴィス氏の、映像をみての即興演奏。
だからか、ちょっと不安定さがあり、この映画の危なっかしさを際立たせる。
そして、即興ならではの疾走感。臨場感。
この奇跡のコラボ。
映画でしか成しえない業。
ストーリー的にはツッコミどころが多いにも関わらず、
映像×演技×音楽。
他にまねのできない金字塔。
原作未読。
日本版未見というか、この雰囲気を壊されたくないから見ない。
黒猫は見た
愛人の夫の殺害計画が、犯人がエレベーターに閉じ込められた為に、全く違う方向に転がるという話。
元軍人の手馴れた犯罪計画の執行と、泥棒少年の愚かで衝動的な犯罪が対照的でした。
ひとつの犯罪のアリバイを主張すれば、もうひとつの犯罪の容疑がかかるという窮地を描きたかったのでしょうか。
捜査をしても宿泊者の偽名すら見抜けないのに、社長の密室殺人は写真だけで暴けてしまうというのが、腑に落ちません。
犯罪計画としては穴だらけ。そもそもロープを登る時点で目撃されても仕方がない。当時のパリっ子は盗み見なんて野暮なことはしないとでも言うのでしょうか…。
カルチャーショック的な発見:
☆上に行くはずだったエレベーターは、電源が落ちてリセットされると下に行くらしい。
☆パリで明け方に外出していると成人でも補導されるらしい。
☆高速道路は何往復でも出来るらしい。
☆煽られてもベンツをぶつけられても、ドイツ人は怒らないらしい。
☆殺人の実行より教唆の方が罪が重いらしい。
☆フランス人は、犯罪者の烙印を押され投獄されることより、愛する人のいない冷たいベッドで朝を迎えることと老けることを心配するらしい。
加えて反戦メッセージが含まれていますが…
拳銃があったからいけないんだ…って…
いや…引き金を引いたキミが悪いんだよ、
そもそも、車を盗んだキミが悪いんだよ…。
他人のフリしているんだから、尚更タチが悪いよ…。
こんなに絶望感の欠片もない心中があるとは。
呆れ過ぎて何とも思えず(-_-;)。
ベンツに乗っていたがために、巻き添えを食らったドイツ人夫婦が一番災難だったという結果に。
途中までは意表を突いたプロットで面白いのですが、犯罪サスペンスとして観ていると、そんな馬鹿なという流れです。エレベーターでの危ういシーン、殺人のシーンなども、現在からすると大変幼稚に見えます。音楽もMiles Davisと言われてみればカッコいいのかも知れませんが、よく分かりません。
一晩中求めた愛は写真の中に。
約束の時間になっても姿を現さない愛人を探しながら深夜をさまようJeanne Moreauの、哀愁漂う横顔を堪能する作品でした。
マイルス・デイビスの音楽が素晴らしい。 「君の言葉なしでは僕は無力...
実はバカ映画
サスペンスはあまり得意ではないのですが、本作はそんな自分にとってもなかなか楽しめる作品でした。
社長夫人と部下のやり手が、ジャマになった社長を殺すという導入ですが、実行犯のやり手がエレベーターに閉じ込められるというプロットは、意表を突かれて面白かったです。
さらに、やり手の車をパクったバカなカップルが行く先で事件を起こすというドタバタ展開は、シリアスな魅力は感じませんが、ブラックジョーク的な可笑しさは感じました。バカっぽいというか。
そして本作、登場人物もほとんどバカばっかりなんですよね!それ自体に笑ってしまいます。やり手も、やり手とは思えない雑な犯行+イージーミスで、おまけにエレベーターに軟禁されるという間抜け振りです。社長夫人もマズい表情で夜の街をウロウロするだけですし。
車を盗んだバカップルは絶望的なまでに知能が低いです。特に男は救いようのない激バカ。女の方は剛力彩芽っぽい無邪気さがバカさ加減を増強させてます。そして彼らとモメるドイツ人旅行者カップルも、常に鷹揚に笑っているという、なんでわざわざそんな造形にしたのか意味不明です。どこを切ってもヘンテコなんですよね。
なので、ルイ・マル自身が悪ノリしてキャラ造形したのかな、なんて想像してしまいました。一見、古典的な名作みたいな面構えですが、バカなコメディ映画としての側面もあるのでは、と感じています。
本作が語り継がれる作品になったのは、ずばりマイルス・デイヴィスのサウンドによるものだと思います。この変わった作品に格調を与え、品位を作り上げているように感じます。あの『プァ〜』というトランペットが入ると、グッと締まるんですよ。実に偉大です。
ジャンヌ・モローのクセのある美貌はなかなかグッと来ます。『突然炎のごとく』よりも若いはずですが、本作の方が成熟した色気を感じました。役柄はどっちもトンチキですけどね〜。
引き込まれていく世界観
久しぶりにじっくり観てジャンヌ・モローの繊細な表情に改めて感心。モ...
久しぶりにじっくり観てジャンヌ・モローの繊細な表情に改めて感心。モロクロ映像からは雨の匂いが漂ってくる気がする。エレベーターに閉じ込められるという設定や写真の結末は携帯電話がある今の時代はありえないと突っ込みたくなりつつもその古くささがこの映画の魅力のひとつ。そして以前は気付かなかったが刑事が冒険者たちのリノ・バンチェラ、ルイ役が禁じられた遊びの男の子!と顔ぶれが実は豪華だった。
最高のフランス映画を観た満足感
初めて観たのは高校の文化祭
その当時は退屈な映画だったなあというだけで、何の記憶も残っていなかった
しかし何十年ぶりに観てどうだろう!
こんなにも面白かったのか!と驚くばかり
年を重ねて、自分なりに酸いも甘いも経験し、それなりの修羅場もへて、ようやくこの映画の染み入るものがわかるようになったということなのだろうか
というよりもジャンヌモローがいい女だ…と思えなければこの映画の面白みは半減してしまうと言う方が正解かも知れない
マイルスデビスの音楽の虚無感が映像とあまりにもマッチしているだけでなく、ジャンヌモローの素晴らしい演技をさらに効果的にしているのは驚嘆すべき
これ程のサウンドトラックは映画史上最高峰と言っても良いと思う
フランス映画の最上質なものを観た満足感が残りました
ヌーベルバーグの一連の作品の中でも特に抜きん出て面白く最高の傑作だと思います
新・午前十時の映画祭
有名な作品ですが、内容の予備知識なしで鑑賞。 サスペンスとしては、...
よかった
歴史的な名作映画だと思っていたら、エレベーターに閉じ込められるおっちょこちょいな話で面白かった。睡眠薬で自殺を測ったらぐっすり眠っただけだったり、トーンはシリアスな割に間抜けでふざけていて、好感が持てた。
車がすごくかっこよかった。
マイルス・デイビスの音楽よかったのだが、運転シーンなど音楽あればいいのにと思うところで掛からないところがあった。
雰囲気は楽しめるおおらかな時代の犯罪映画
総合:65点
ストーリー: 55
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 60
音楽: 75
頭の足りないチンピラと花屋の売子の衝動的な犯罪は別にしても、誰が見ているかわからない事務所の建物の外で、外壁をロープでよじ登って完全犯罪を目指そうというこの計画は本当に大丈夫なのか。この時点でもう完全とは程遠いようだ。だがそんなことは問題なく彼は計画を進め、そして映画の本筋の物語もまた彼の完全な計画を狂わせながら進んでいく。
警察は凶器の拳銃や宿泊先のモーテルの指紋すら調べない。犯罪捜査の技術もやり方もいいかげんなのだろう。そしてジュリアンとカララ夫人の仲睦まじそうな一緒の写真があっただけで、あっさりと諦めて刑務所暮らしを想像してしまう夫人。その写真があるからといって、不倫の証拠にはなっても夫の殺人の証拠などにはならないだろうに。犯罪物としては物語は全体として緩い。なんともおおらかな時代だ。現在の映画を見ていると、どうしても粗さが目立つ。それともエレベーターに閉じ込められたことを取り調べで白状したジュリアンが、実は社長殺しのこともついでに白状していたのだろうか。
犯罪物としてみればたいしたことはないけれど、作品の雰囲気はいい。ジュリアンが閉じ込められたことなど知らず、浮気や彼の気が変わったかもしれない疑惑に苛まれながらも彼を信じようとして一途に彼の痕跡を街に探し求める。そんな大人の女の寂しい不倫の話としてみれば悪くない。
ヌーヴェルヴァーグの記念碑的作品
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