劇場公開日 1987年12月19日

「再度の鑑賞で、史実から離れた希望の抵抗物語に心を奪われ…」死刑執行人もまた死す KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0再度の鑑賞で、史実から離れた希望の抵抗物語に心を奪われ…

2024年9月18日
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鑑賞方法:DVD/BD

フリッツ・ラングは「メトロポリス」
で有名な監督だが、
これまで他の監督作品を鑑賞することは
無かった。
しかし、ルイス・ギルバート監督の
「暁の七人」という、
ヒトラーに次ぐナチスの実力者と言われた
ハイドリヒ暗殺を描いた作品を観た関連で、
同じ事件を扱ったこの映画を続けて鑑賞。

しかし、「暁…」がハイドリヒ事件の
暗殺チームの悲劇を史実に即して
描いたのに対し、
当作品は史実からは離れ、
大戦最中の作品でもあったためだろうが、
チェコ国民の抵抗心とプラハ地下組織の
反ナチレジスタンスを賛歌するような
内容に思えた。

そして、もう一つのテーマのように見える
プラハ市民のゲシュタポへの反応や
青果店夫人の対応などを目の当たりにして
目覚める教授の娘の成長譚的要素に
関連して、
彼女が父である教授を助けまいと奮闘するも
間に合わず父は銃殺されてしまう展開には、
当時のプラハ市民の悲劇へ寄り添う
制作スタッフ側の姿勢も表れていたようにも
感じた。

正直なところ、1回目に観た時には
字幕スーパーが見づらいこともあり、
各人間関係が良く分からなかったので、
この作品が充分に理解出来なかった。
そこで、事前に登場人物のプロフィールを
掴んでの再鑑賞に。
そして、
良く練られた脚本と、
史実から離れてでも描こうとした
不正な支配への
希望の抵抗物語に心を奪われた。
もっとも、教授の
“侵略者を追い出し…
民衆が主人公になる国に…
私を思い出すなら…
自由のために戦った者として思い出せ”
と語る感動的な遺言にも関わらず、
その後長きに渡り、
国がソ連支配下の社会主義国家として
不自由な国になってしまったのは、
制作者側も読み切れなかった
歴史上の皮肉ではあったろうか。

この後、ラング作品としては、
「M」と「恐怖省」を鑑賞する予定だが、
ラング監督がこれらでどんな希望を
伝えてくれるかが楽しみになった。

KENZO一級建築士事務所