「ドキュメンタリータッチの繊細で写実的な初恋物語、余情溢れる卓越した音楽の青春映画」ジェレミー グスタフさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリータッチの繊細で写実的な初恋物語、余情溢れる卓越した音楽の青春映画
1970年代の青春映画ジャンルの代表作。初監督アーサー・バロンの演出がカンヌ映画祭で高く評価された。ニューヨークに住む高校生の切ない初恋秘話を飾り気のないドキュメンタリータッチで描き、主人公のジェレミーとスーザンがまるで実在の人物に感じられるようで、瑞々しく生き生きと表現されている。リー・ホールドリッジのクラシックから軽快なポピュラー音楽とポール・ゴールドスミスの卓越したパン撮影も心地良い印象を残す。ロビー・ベンソンが歌う主題曲(哀しみのジェレミー)は、未熟で不器用な青春期にのみある迷いや不安な心情と、それでも生きて行くんだと自己肯定するこころの叫びを語り、共鳴性の高い名曲。グリニス・オコーナーが歌う(ジェレミー)が小品ながらそれに呼応したリリックで、ふたりの楽しい思い出がフラッシュバックされることで更に切なさが募る。刺激的な表現や作為的な演出から遠く離れて、純真無垢な時代の確かな成長を繊細に描いたリリシズムの青春スケッチ、その表現力の真摯さが素晴らしい。
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