ジェルミナルのレビュー・感想・評価
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弱者に厳しい世の中、それでも・・・生きていく!
自然主義を提唱したエミール・ゾラの同名小説の映画化。19世紀末の北フランスの炭鉱町で起きる労働運動の顛末を骨太に描く。不況のあおりで長時間の重労働に見合う賃金をもらえず、貧困にあえぐ労働者の悲鳴のような叫びが胸に突き刺さる。労働状況の改善を求めストライキに突入する労働者たちに、これでもかこれでもかとたたみかける悲劇の連鎖が観ていて辛い(物語の中盤であっさりドパルデューが死んでしまうのにも驚き)。弱者に厳しい世の中は現代でも変わらない。何故、富裕層と貧民層の格差が埋まらないのか。その1つの原因が富裕層の「意識」にあると思う。その「意識」は2つに大別される。それは「意識的な差別」と「無意識な差別」だ。前者は当然自分の利益のために弱者からしぼりとるだけしぼるという悪意あるもの。本作においては炭鉱の経営陣や商店の店主が顕著な例だ。後者の「無意識な差別」は「無知な差別」ともいえる。つまりは世間知らずのお金持ちが、貧困の本当の意味を分かっていないことにある。会社の経営に携わっていない裕福な婦人たちは、貧しい者たちへ食べ物や衣類の施しをするが、恵んでもらった衣類を食べ物に変えていることを知らない。つまり本当に必要な物が何かも知らないで、善行をしたと悦に入っているのだ。そんな彼女たちだから、自分たちが貧しい人々にどれほど憎まれているか想像もしていない。施しにやって来た裕福な娘を、頭のボケてしまったその家の祖父がいきなり殺してしまうシーンがある。人物の判別もできないほどの老人が、突如として娘に憎悪をむき出しにするのだ。善良に育ってきた娘はおそらく生まれて初めて向けられた憎悪に驚いたことだろう。何故自分が殺されるのかも分からぬまま死を迎えたのだろう。それは生活の改善を求めてのストライキがますます自分たちを窮地に追いやっている労働者の立場など考えたこともないことへの罰だ。無知とはこの世で最も残酷な罪なのだ。タイトルの「ジェルミナル」とは草木の芽吹く月を表わしている。労働運動に敗北しても、そこに次へ繋ぐ希望を見出せる労働者のパワー。その不屈のパワーが社会を形成していることを忘れないでいたい。
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