「美しく怖い映画でした。」幸福(しあわせ) JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
美しく怖い映画でした。
すべてが美しい。街も家も人も。
ポップな色遣いも素敵だし、ファッションもすごくかわいいしおしゃれ。
子供たちの存在も花を添えてますね。
あと結構斬新なカメラワークと編集。
あるものを交互に映し出すのって何の効果があるの?あれ綺麗かな?
あと、同じシーンを繰り返すの。
撮影隊が見えちゃってるとか、すごい手作り感あったのも珍しくて、昔の映画らしくて好き。
それと、広告やらの文面で、表現しているのが、なんとも映画的で、好き。
話は最低な夫の話でした。
最初、観客としても郵便局のお姉さんかわいいなあ。青い目素敵だなあ。
奥さん目おとりしちゃうなあ。
なんて観ていたけれど、不倫が始まってからは、まるで逆転した。
こんなにも可愛いあどけない奥さんをよく裏切れたな。ワンピースもすごく似合うし、
落ち着いたトーンで話すのも魅力的。
それに対して、郵便局のお姉さん。もう夫と寝てからは娼婦のように見えてきて、
すごく痛々しくて残念だった。
それから夫のほほ笑みとか見るだけで嫌悪感が沸いて、すごく気持ち悪く思えたな…。
「妻より先に出会っていたら君と結婚してたよ」とか本当に稀に見る最低さだな。クズだな。
そんでもってこの男、友人には自分は一途とかいうんですよ、都合いい奴だわ。
(P.T.T.の手紙だけは死ぬほど洒落てて格好よかった)
映画としてはフランスのすばらしさが一番でした。
フランスの魅力はひしひしと感じました。
なにげない会話でも、フランス語ってあんなにセクシーなんだなあ。
そんで、むしろセクシーなシーンはあんなにも美しいんだなあ。
ハリウッドでは作れない美しく、お洒落で、重みのある質感。
ラストシーン。
夫が冷たくなった妻の遺体を抱いている中で、妻が川で溺れゆくシーンが回想されるのは本当に秀逸でしたな。ことの重大さが思い知らされる。
このシーンのためだけでも観る価値のある映画。
結局この男、誰でもいいんですよ、美しくて自分を待ってくれている女なら。
だからすぐ結婚できるし、奥さん代わりにしようとする。
なんて利己的な奴だ。
そのうえ、セックスの評価するとかまじで何様だ?普通に4人で秋迎えんなよ。
こいつが死ぬときまで奥さんの事が頭にこびりつき、苦しませ続けますように、どうかお願いします。
奥さんがいなくなっても、普通に当たり前のように、続いていく日々が虚しかったですな…。
こんなに嫌な切なさに包まれる映画は初めてですよ…。
これ考えれば考えるほど、人生のブラックな面に気づいてしまう気がする。
(自分なんかいなくても、代わりはいくらでもいるし生活は回るのでは?とか。
自分がいることで成り立っているようにみえた幸せも他人で代用できたのでは?とか)
追記:
冷静になって思ったけどさ、
妻の行動も割と不可解なんだな〜。
ラストで、割としつこく夫を疑ってて、それで本当に不倫してたことを知ったら死ぬなんてさ。子供たちを残して。そんなの身勝手だよね?しかも最後めちゃくちゃ寝てたよね。ただ狂ってる奥さんに見えちゃうよ。寝た後で冷静になったら、やっぱり死のうってなったってこと?
いや、でも妻は最初から全部知っていたのかね。こうすることも鼻から決めていたというか。不倫相手に家族ごと受け渡す決意をしてたってこと?懐広すぎん?
それかあれかな、一回いい感じを見せてからのどん底に突き落とすという制作側のエゴかな?だとすれば、いくらストーリーを盛り上げるためでも、あんな女の人は居ないと思うぞ。
さらに追記:
監督/脚本が女の人でした!
アニエスバルダ。めちゃめちゃ有名な人やないかい。冬の旅もこの人なんだね。観てみよう。