サマー・ストックのレビュー・感想・評価
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サマー・ストック
ジュディ・ガーランドがMGMで出演した最後のミュージカル・コメディであり、当時日本では劇場未公開に終わった作品だが、これは傑作だ。1930年代後半から本作が製作された1950年まで、MGMを代表するミュージカル映画の大女優としてハリウッドに君臨したジュディ・ガーランドであるが、アメリカ映画史上に残る数々の傑作ミュージカル作品を残している。
「踊る不夜城 ('37)」、「初恋合戦 ('38)」、「オズの魔法使 ('39)」、「青春一座 ('39)」、「Strike Up the Band ('40)」、「美人劇場 ('41)」、「Babes on Broadway ('41)」、「For Me and My Gal ('42)」、「Girl Crazy ('43)」、「若草の頃 ('44)」、「Ziegfeld Follies ('45)」、「The Harvey Girls ('46)」、「Words and Music ('48)」、「踊る海賊 ('48)」、「イースター・パレード ('48)」、「In the Good Old Summertime ('49)」等々。
フレッド・アステアと共演し、日本でも大ヒットした「イースター・パレード」は個人的にもこれまでに観たミュージカル映画のベスト5に入る大傑作だが、この後、同じくアステアとの共演で企画された「The Barkleys of Broadway ('49)」、「イースター・パレード」と同じくアーヴィング・バーリンの歌曲による「アニーよ銃をとれ ('50)」の2本が、共にガーランド自身の薬物中毒や精神疾患の為に実現しなかったり、降板させられたりで、前者はジンジャー・ロジャースが、そして後者はベティ・ハットンが主役のアニー・オークレイ役を演じることにより、それぞれ映画は完成した。特に「アニーよ銃をとれ」は、実際にジュディ・ガーランドによる2つのミュージカルナンバー("I'm An Indian, Too"とDoin' What Comes Natur"lly )の撮影が終了しており、これらについては、「ザッツ・エンタテインメント PART 3 ('94)」の中で、レストアされた高画質、高音質で紹介されており、共に素晴らしい出来のナンバーだったことから、ジュディ・ガーランド版の「アニーよ銃をとれ」が完成しなかったことは返す返すも残念でならない。(代役になったベティ・ハットンが悪い訳ではないが。)
このような非常に不安定な精神状態、体調の中で、MGMで最後に主演し、ジーン・ケリーと共演したのが本作だった。製作が「錨を上げて ('45)」のジョー・パスタナク、監督が「イースター・パレード」、「リリー ('53)」、「上流社会 ('56)」、「浮沈のモリー・ブラウン ('64)」、「歩け走るな! ('66)」のチャールズ・ウォルターズ、「錨を上げて」、「三銃士 ('48)」、「若草物語('49)」「恋愛準決勝戦 ('51)」、等で非常に美しいテクニカラーを堪能させてくれた撮影監督のロバート・プランク、その他、MGM専属のベテランスタッフ(音楽: コンラッド・サリンジャー、スキップ・マーチン、美術: セドリック・ギボンズ、衣装: ヘレン・ローズ等)と名脇役たち(フィル・シルヴァース、マージョリー・メイン、エディ・ブラッケン、レイ・コリンズ等)に支えられて、アメリカ中西部の片田舎を舞台にした楽しいミュージカルコメディに仕上がっている。
さてジュディ・ガーランドはどうかというと、劇中では問題なく、見事な歌とダンスを披露し、コミカルな演技も卒なくこなしているのだが、撮影時に体重が10kg近くも増えてしまい、減量が大変だったようだ。実際にかなり太っていて、この映画の役柄である女農場主としての貫禄はあるもの流石にちょっと困ったのも事実だ。映画のタイトルのヘレン・ローズによる衣装も、ジュディ・ガーランドの為の衣装ではなく、準主役というか脇役に近かったグロリア・デ・ヘヴンの為であるところが、なんだか不憫に思えたものである。但し、映画のクライマックスのジュディによるソロナンバーが、あの「ザッツ・エンタテインメント ('74)」でも紹介されていた文句の付けようがない傑作ナンバーの"Get Happy"であり、ここでのジュディは減量に成功し、美しいスタイルで歌とダンスを見せてくれるのでホッとする。
一方、ジーン・ケリーは、「巴里のアメリカ人 ('51)」の前年でもあり、ノリに乗ったスピーディーでダイナミックなタップダンスをたっぷりと見せてくれるので圧倒される。特に、新聞紙を小道具にして踊るナンバーの"You Wonderful You"は、計算し尽くされた振付け、巧みなアクション繋ぎの編集、タップ音、床の軋み音、新聞紙が破れる音とメロディーが完璧に合っていて、ミュージカルナンバーとして白眉の出来栄えである。
「サマー・ストック」は、子役時代から注目され続けてスターになり、そのまま10代から20代後半までをずっとMGMで過ごし、ミュージカル映画のトップ女優となって、このスタジオに多大な貢献をしたにもかかわらず、精神的ストレス、過労から薬物依存症に陥り、これが禍して同スタジオを解雇される直前にジュディ・ガーランドが主演したMGM最後の作品という悲しさがどうしても付きまとうが、映画自体の出来は良く、存分に楽しめる内容になっている。
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