「とんでもない映画を観てしまった」裁かるゝジャンヌ 4匹のミーアキャットさんの映画レビュー(感想・評価)
とんでもない映画を観てしまった
観なければ一生後悔しそうだったので鑑賞しました。
映画.comがきっかけで作品を知り、主演のルネ・ファルコネッティの生涯にも惹かれていたので非常に大満足な映画でした。
セリフは一切なく要所要所にフランス語と日本語の字幕が出るのみ。会話のシーンの多さの割に字幕が少なく、演者の表情からストーリーの展開が伝わります。
BGMのパイプオルガンが荘厳で裁判という非日常空間にぴったりでした。所々おどろおどろしく怖かったです。
映像のほとんどが審問者達とジャンヌのアップを交互に写したもので、出演者たちの表情が見事でした。審問者達は本当に怖かった…ニヤニヤと笑ったり眉を吊り上げて怒ったり、はたまた優しい表情でジャンヌを陥れようとしたり、しかし最後ジャンヌが火炙りを選んだ時にはまるで別人のように困惑し涙を流し慈悲深い聖職者の顔でした。
ルネ・ファルコネッティは映るたびに顔も表情も違うように見えました。「なんか急に痩せた?」と思う程。一貫して現実を見ていないような表情で時折涙を流し、語る言葉から強固な信心深さが伝わるのも相まって妖精のようでした。涙のせいかカメラのせいかずっと瞳がキラキラしてるので本当に妖精みたいでした。審問者達の厳しい質問にも絶望的な言葉にもなんとなく現実味のない表情で応えていたので「神の娘と信じるだけあって違う次元に生きているんだなぁ」と純粋に感じました。
最後のミサと十字架を抱きしめた時の恍惚とした表情は、私には一生味わえない何かなのだろうなぁ…
ストーリーとしては序盤に「人間としてのジャンヌ」とありましたが、先ほども書いたように妖精のように感じられたジャンヌでしたし、審問者の問いに宗教的に回答していたので人間らしさはあまり感じませんでした。喜怒哀楽に乏しいため「この人が本当にフランス軍を率いたの?」と疑わずにいられないレベルです。
唯一人間らしさが見れたのは、一旦異端者と認め終身刑を受け入れたものの、死への不安から神に嘘をついたと
慌てふためく時と、その後即座に死刑執行されると知らされたときの「もう…今?」と尋ねた時。絶望というよりも驚きと恐怖に満ちた表情のジャンヌはまさしく人間だったと思います。
最後火炙りの中でも彼女はひたすら神を思っていました。誰を憎むでも何かを悔やむでもなく、ただ神に祈っていた姿は聖人と呼べるのかもしれません。
総評として感じたのは「信仰心は守りも奪いもする」のかなということ。神という存在に対する考え方が公式に人の生き死にを左右していた時代に、その高い信仰心から国を救い、果てには自身で燃え尽きたジャンヌ。同じく神を重んじてジャンヌを追求した審問者達。そしてジャンヌを聖人と信じ教会に牙を剥き弾圧された民衆達。亡骸の横で泣き叫ぶ子供達。守られると同時に奪われて行く世界がこの映画にはあったと思います。