「なんなんだ?この新しさは?」裁かるゝジャンヌ osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
なんなんだ?この新しさは?
なんなんだ、これは?
全く古さが無い。いや、むしろ新しさを感じる。
2Kレストアで修復されたのも大きいと思うが、それこそ蓮實重彦のコメントではないが、古典な筈なのに前衛というか、とても現代的で斬新な作品に見えた。
映像は勿論だが、ずっとバックで鳴っていた音楽も、ある種、現代音楽のように聴こえた。
これだけ今の21世紀に響くわけだから、当時は逆に興行的に振るわなかったのも無理もない。
欲を言えば、元々はトーキーになるはずだったらしいから、会話の部分はもっと字幕を挿入して欲しかった。
やはり、あの裁判は、ジャンヌ・ダルクの驚くべき知性と老獪な聖職者(とは名ばかりの)連中との丁々発止のやり取りが、とてもスリリングでサスペンスフルなドラマだった訳だから。
ひょっとしたら本当の最初のフィルムには、もっと字幕が入っていたのかもしれないが。
それに裁判中、ジャンヌ・ダルクはズバ抜けた思考力をフルに発揮して臨機応変な対応をしていたようなので、あの超弩級な悲劇的感情を全面に横溢させた芝居の一辺倒では、ちょっとどころでなく、かなりオーバーアクションが過ぎたとは思う。
あと、裁判記録に忠実に沿ったという割には、最後の死刑の原因(たぶん嵌められたであろう男装の件)を書き換えてしまっては、ある種フィクションという名の御都合主義となってしまい、あれは、ちょっと勿体なかった。
まあ、ああでもしないと特にサイレントの場合、クライマックスの盛り上がりに欠けると思ったのかもしれないが。
とまあ幾つかツッコミたくなる箇所もあったりしたが、こんな物凄い映画をDVDではなく、映画館のスクリーンで観ることが出来て本当に最高だった。
もう、こんな機会は当分やっては来ないだろうから、出来れば、もうあと2〜3回は観に行きたいところだ。