「見所はひとつ、ジョン・トラボルタの華麗なるディスコダンス」サタデー・ナイト・フィーバー Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
見所はひとつ、ジョン・トラボルタの華麗なるディスコダンス
この映画の魅力は偏に主人公トニーを演じた新人ジョン・トラボルタのダンスにある。カラフルな光線を浴びてディスコの舞台を華麗に踊りまくるトラボルタを観ていて飽きることはない。しかし物語は単純そのもの、優勝賞金500ドルを掛けた競技会で圧巻の踊りを披露するダンスシーンがクライマックスの青春サクセスストーリー。そこまでに至る紆余曲折が弱く、主人公の良い子振る作為が見え透いてしまう。人物の掘り下げが弱い。このトニーに関わる人物として、踊りのパートナーのステファニーと、聖職から挫折した実兄のフランクが居る。これはトニーの性格を引き立てる意味で上手く行っている。ただ、ブルックリン生まれの仲間たちの青春群像の表現には無理があると思った。それは、土曜のダンスの為だけに働くトニーの生活との対比で、彼らの無軌道振りが社会背景を伴って定義付けられていないため、ドラマに衝撃を与える一人の自殺が効果なく終わっているから。これはそのまま、主人公トニーの大人になる成長過程に繋がるから作劇の問題として大きいのだ。
結果的にドラマとしての完成度は低いが、現代の若者の姿を端的にカッコ良く描いたところは好感もてるし、映画のヒットに対して何も批判めいたことは言う必要はないと思った。
1978年 8月26日 郡山スカラ座
人生で一度だけ新宿のディスコで踊ったことがある。卒業祝賀パーティーのノリで行ったのだが、誘われて私が踊り始めると、ひとりの東京出身の淑やかな女性が、信じられないと驚かれたのを今でも鮮明に記憶している。確かにダンスをするようなセンスは持ち合わせていない男だ。それを痛いほど実感したのが、翌朝布団から起き上がることが出来なかった時。ダンスは素晴らしい肉体表現のスポーツであり芸術と、身をもって納得した。