「人としての良心に光明」さすらいの航海 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
人としての良心に光明
最初から分かっていたのでしょうね。ドイツ側としては。セントルイス号が(目的地のキューバだけでなく)各国で入港を拒否されるであろうことは。
本作の冒頭でも、セントルイス号の航海が、人道的なものであることを仮装していること、この航海が宣伝相の発案であることが語られています。
結局は「ユダヤ民族を受け入れる国は、世界のどこにもない。」というプロパガンダの一環だったと言うことでしょう。
人間は、やはり陸(おか)で生活する生き物であってみれば、海の上の船内での「漂流生活」が、いかに不自由で不安なものであるかは、推察するに余りがあります。
ちょうど、シュレーダー船長の机の上で飼われていた籠の小鳥のように。
それだからこそ一層、彼の英断は光るものと思われました。評論子には。
(シュレーダー船長の計画にしろ、万が一、億が一にも故意が疑われれば、帰国後の彼自身が国家反逆罪に問われかねない「危ない橋」であったことは明らかです。)
言い換えれば、ナチスというウイルスに冒されてしまった「国としてのドイツ」ではなく、ドイツ人であるシュレーダー船長という「人としてのドイツ」の良心に一縷の光明を見つけることができたのは、評論子だけではなかったことと思います。
そのことが、忌まわしいセントルイス号のこの航海について、一縷の光明だったのではないかと思いました。評論子は。
もちろん、佳作であったとことに、多言は要しないと思います。
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きりんさんのコメント
2023年4月21日
杉原千畝記念館に行きました。不便な所にある手狭な記念館でした。
命がけの脱出を手助けした杉原千畝が、いまだ我が国では文化人として扱われず、新しいお札の顔にも未だ採用されないことを、僕は口惜しく思います。