叫びとささやきのレビュー・感想・評価
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アンナに感情移入したのは私だけ?
三姉妹のそれぞれのセリフが舞台を見ているような臨場感があり、同時に終始緊張感もあるので、やや肩が凝ってしまうような疲れる映画だった。
個人的に一番感情移入したのはメイドのアンナであった。献身的にアグネスに仕えたが、彼女の日記によれば世界で一番そばにいて欲しい人は姉妹であったと言うことで、いつも身近にいたアンナではなかったのはちょっと切ないではないか。上流階級の人たちと、そのメイドとでは、愛情や友情の面では対等にはならないということだったのか?アンナへの形見が、金銭的価値のないアグネスの日記だったと言うところが、ある意味、アンナにとっては一番価値のある形見だったのかもしれない。
アグネスにしても、結局、姉妹からは愛情は受けられなかった訳なのに、日記では姉妹が来てくれたことに感謝していると記したのは、後で姉妹に読まれることを想定して書いただけなのだろうか?そうだったら、アグネスにとっても切なかったのではないだろうか。
アグネスを抱くアンナの姿のカットを見たとき、ミケランジェロのピエタ像のように感じた。
重苦しい映画ではあったが、天使のような、あるいはマリアのような存在のアンナに救われた。
高尚過ぎて…
ステイホーム週間につき、ウォッチリストを消化中。なので目に付いた作品を鑑賞。
オープニング、セリフが何もないシーンが続く…。
ってここで、あ、無理かも、とは思ったが、頑張って(笑)観てみた。
外観はいまいちわからなかったけど、お屋敷(城?)の中のお高そうな装飾品、贅を尽くした調度品の数々。素晴らしいお召し物。お着替えはもちろん1人ではしない。お風呂は…??
と、まぁ、一般人にはかなり目の保養に。
登場人物は割と少なめ。
アンナ以外にも料理人とか給仕人とかいるのかな?出てこなかった気がするが。
ずっと同じ舞台での演技を観ていたかのよう。出でくる部屋が赤を基調にしていて、どこを切っても似たようなんだもの。
一部日本の映画「お葬式」とちょっと似ていたシーンも。ちょっと。
シーンが変わるたびに聞こえてくるささやき(ヒソヒソ話)がだんだん気味悪さを増していく感じ。
ワイングラスの破片で血だらけとか、意味がわからないシーンもあり。
高尚過ぎて、理解に苦しむことも。
いろんな意味でやっぱり一般人で良かったわ〜
赤がキツい
本作は苦手な一本です。血がつながっていても心がつながるとは限らない普遍的な真実や、埋まらない溝、偽りの自分を生きる虚しさ(これはベルイマン作品に共通している)など主題は理解できるし、ものすごい説得力で迫ってくるのですが、生理的に無理でした。
赤がキツいんですよ!
本当に赤、赤、赤…目が痛いです。
これがモノクロ作品であれば、主張が弱まるので評価は下がるかもしれませんが、もっと落ち着いた、静かな説得力を持った作品になったと思います。モノクロだったらプラス1.5点はかたいです。
あと、中盤まで話の展開が冗長なのは本作の欠点かな、と思います。
一応、感想を箇条書きで。
・三姉妹の中でも、長女カーリンの生き方はキツい。彼女はマジで地獄人生ですね。
・イングリット・チューリン好きにとって、カーリンの熟女ヌードはプラスポイントになりそうですが、ぜんぜん魅力なかったです。人間性に魅力がないと、どんな美人でヌードであっても良いとは思えないのだ、と気づきました。
・次女アグネスは孤独な上に早生しますが、豊かな内面を持った、割と幸せな人だったのかも。
・アンナがアグネスを甲斐甲斐しく世話してましたが、喪った子どもへの代償行為だけではなく、アグネスが優しい人だったからかな、と思いました。
・三女マリーアはクソ女ですが、割と良くいるタイプですね。
・カーリンの旦那が絵に描いたようなクズで笑った。
・生理的にダメでしたが、終盤の展開には目が釘付けでした。カーリンとマリーアの関係性の結末は非常に納得できました。お前らならばそりゃそうだ、って感じです。
・アンナがアグネスを抱く時に胸をはだけさせるのは何故?謎です。もしやサービス的なやつでしょうか。
・あの一族は代々あんな感じなんでしょうね。
愛のために死にかけている赤い家。
20世紀最後の巨匠ベルイマンの代表作。 本作で描かれるのは互いに相反しながらも根源では繋がっている切っても切れないもの。「叫びとささやき」「生と死」「情熱と冷酷」「愛と憎しみ」「赤と白」。まず目を奪われるのはインパクトのある映像。壁から床、家具調度まで真っ赤な部屋の中で、静かに動き回る白い服の女たち。そして赤いベッドで真っ白なリネンに包まれて横たわる病気の女・・・。対照的な赤と白が、その家の特異さを物語る。その家で暮らす4人の女、理性的な長女、病気の次女、華やかな三女、地味なメイド。この4人の女たちの中にある様々な感情が、叫びとなり、ささやきとなり、我々をその世界へ誘っていくのだ。複雑な愛憎で今にもバラバラになろうとしている彼女たちを繋ぎとめているのは、死にかけた次女。彼女の肉体的な苦しみが残りの3人の心を優しくする。長女は、痛みをこらえる彼女の髪をとかし、三女は本を読んで聞かせる。そして母性愛の強いメイドは、まるでピカソの描く聖母のように、豊かな胸で彼女を抱きしめる。彼女たち心の奥底に潜む歪んだ愛情。それは行き場を失った愛のしこり。長女には愛という情熱を拒む夫への、次女には幼い頃亡くした母への畏怖、三女には自分への愛が覚めてしまった愛人への、そしてメイドには幼くして亡くした自分の娘への・・・。亡霊のように4人の女たちに憑りついている「行くあてのない愛」のためにこの赤い屋敷も死にかけているようだ。 皮肉なことに、この家で一番「生命」に溢れていたのは、病身の次女。彼女は、肉体の苦しみを何とか乗り切って、生きよう、生きようともがく。夜毎の彼女の「叫び」は、この家に人間が住んでいるという唯一の証だったのだ。「理性」という仮面をつけて、家族の「ふり」をしていた姉妹たちは、次女の死によってバラバラになる。長女と三女は互いの心に秘めていた愛憎を一気に吐露する。愛し合い、憎しみ合って、思いのたけをすべて吐き出すと、彼女たちは再び仮面をつけて、この家を去っていく。永久に・・・。残されたのは次女の悲しい生への想いだけか・・・。
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