劇場公開日 2018年7月24日

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「どうしようもない孤独からの救い」叫びとささやき Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どうしようもない孤独からの救い

2021年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

良く分からないところが多かった。特に3姉妹の長女、カーリンの存在が。

彼女は妹マリアに触られることに拒否反応を示すが、それは何故?激しく罵り、すぐに自己嫌悪に陥り謝る。精神分裂症ということ?ガラスで陰部を傷つけ、その際の血を口元に塗りつけるのは、夫への拒否反応が昂じたため?ベルイマンの母と同じ名前だが、心の底では愛を求めてでも自業自得で得られない、こういうヒトだったということか?

一方、三女のマリアは分かりやすい、表面的愛想はとても良いが、貞操観念無く、自己愛の強い女性のイメージ。いざ土壇場になると、死んだはずの次女アグネスに抱きつかれたら激しく拒否した様に、長女も含めて他人には本質的に冷たい。彼女と医師のやり取りは、ベルイマンとマリア演じる監督の愛人だったというリブウルマンとの実像を反映か、何だか現実と非現実が交錯していて、映画芸術に全てを捧げる?ベルイマンの恐ろしさを感ずる。

次女アグネスは勿論殉教した聖アグネスのイメージ。最後にあった様に、ささやかな肉親ととの触れ合いを至福と感じられる、神的な存在で、命無くしたが、この物語の救いでもあるし、美しく映像化もされている。

そして、召使いのアンナは、レオナルドダビンチの聖アンナ、即ちマリアの母で、マリアを膝の上に抱くイメージか。

物語全体としては長女や三女の姿に見える人間の孤独の凄まじさが、アンナとアグネス、神の存在により部分的に、映像的にも救われるという物語か。好きなタイプの映画だとは言えないが、時計やミニチャアの家族家の映像、時を刻む音、死に向かうカウントダウン?、文学的にも映像的にも音的にも、良くも悪くもある人間性の深いものは感じさせられた。

Kazu Ann