酒とバラの日々のレビュー・感想・評価
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アルコールは怖い
・自分自身が酒での失態から酒をやめて5年ほど経つけれど、公開時の1963年からアルコール依存症の自助会がある事に驚いた。自分は登場人物のような入院するとかまでじゃなくて酒をやめているけれど、主人公のジャックレモンや諭していた人が、酒におぼれた生活と酒をやめた生活は全然ちがうというセリフが、当時の自分には多分響かないだろうなと思った。多分、この映画を観た後にもがぶがぶ飲んでいただろう。また、奥さんが寂しい寂しいと言って飲んでいたのもよくわかる。とにかく酒だけしか孤独を癒す術がないという感情に呑まれていたのを思い出すし、今も孤独感はあるけど、その増幅器としての酒がないだけましという感じかと思う。とにかくアルコールは恐ろしいという事を改めて思った。
・ラスト、奥さんがどうしても酒をやめたくなくて家族を捨てていくのが衝撃だった。
・酒に酔った演技が本当に酩酊しているように見えて凄みがあった。
・個人的には自らの過去を観ているような気分になり、若干しんどい気持ちになった。
・前半であんなに美人の女性と恋仲にスムースになる辺りが眠くて仕方なかった。
ワインとバラが象徴する芳醇な香りと潤いのある豊かな人生の収穫 そのような生活は儚くも霧の中に消えていったのです
酒とバラの日々
略して「酒バラ」
ご存知、ジャズの超ド定番曲
ほんの少し聴けばあの曲かとなるような誰でも知っている曲
オシャレな曲で、美女を食事にお誘いしてワインを傾ける時に流れていて欲しい曲です
フランク・シナトラの歌入りが有名ですが、元々は本作の主題曲でヘンリーマンシーニ楽団の演奏が元祖
オスカーピーターソントリオ、ビル・エバンス、ウェス・モンゴメリーなど錚々たるジャズの巨匠達も演奏しています
どれもストリーミングで簡単に聴けます
本作の劇中でのこの曲は、タイトルバックで歌入りで流れますが、あとは様々に編曲されたものがごく控えめに流れるだけです
監督ブレイク・エドワーズ、音楽ヘンリー・マンシー二
このコンビで、本作の前年1961年の「ティファ二ーで朝食を」では名曲「ムーンリーバー」を大ヒットさせています
曲名はもちろん本作のタイトルからです
では本作の原題の由来は?
はかなきは酒とバラの日々
二人の道は霧の中よりいでて
夢のうちに消えん
ジョーとカーステンが初めて食事したあと、深夜2時の真っ暗な波止場で海を眺めて、もうかえろうかとなったときに時に、初めて飲んだカクテルに酔った彼女がつぶやくのがこのセリフ
これから取られています
英国の19世紀の詩人アーネスト・ダウスンの詩の一節です
彼女、文学全集を愛読書にしているのです
実はこのセリフが二人の将来を暗示していたのです
ワインとバラが象徴する芳醇な香りと潤いのある豊かな人生の収穫
そのような生活は儚くも霧の中に消えていったのです
この曲の優雅な曲調からは、男女の社交に明け暮れた日々を懐かしむ
このようなイメージを受けると思います
自分もそうでした
ところが映画の内容は全く違いました
やがて結婚して、赤ん坊にも恵まれたこの二人は夫婦揃って重度のアル中になってしまうのです
後半は1948年のビリー・ワイルダー監督の名作「失われた週末」以上の修羅場となっていくのです
タイトルバックの暗く波打つ水面とバラの映像
その水とは酒のことだと思います
「近くでみると汚いのに、遠くから見ればきれいよ」のカーステンの台詞の意味がそこから現実化していくのです
エレベーターのシーン、カーステンの実家の2階で彼が服を脱ぐシーンはさすがジャック・レモンで笑ってしまうのですが、彼のその軽妙な喜劇的な演技が後半には影を潜め、シリアスそのものになっていくのです
妻のカーステンを演じたリー・レミックも名演でした
酒も飲まなかった真面目な彼女は、終盤には殺虫スプレーを撒かれたゴキブリ王国の住民のように逃げ惑うのです
その落差は衝撃的ですらあります
ラストシーン
この夫婦の将来を、BARの電飾看板の明滅をもって、どうなるかわからないと示しています
見事な演出でした
しかし波止場のあの夜、彼女はジョーにここで自分はチンピラに殺されて父親がトラックで遺体を引き取りにくる夢を見たとジョーに言っていたことを思い出さねばならないのです
タイトルバックの暗い水面に浮かぶバラの映像
それは彼女の父親が自分が育てたバラをその波止場の水面に投げたその映像だったのかも知れません
ブランデーアレキサンダー
男の酒飲みなので頼んだことはないのですが、ブランデーをベースにカカオクリームと生クリームでシェイクしたカクテルで、チョコレートケーキのような女性が好きそうな甘い味わいだそうです
つまりアルコール度数26度もの高さなのに、それを感じさせることなく、女性を酔わせて口説くには最適の「完全無欠」のカクテルという訳です
ジョーがこのカクテルを注文したのは、もちろん彼女がチョコレートが大好きと聞いたからです
しかしカクテル言葉には「愛の告白」というものもありました
彼女を酔わせてどうのという下心からのチョイスでは少しもなく、ジョーは本当に彼女が好きだったのです
西田敏行とジャック・レモンは良く似ています
その芸風を師としていたことが本作のギャグシーンを観るとよくわかります
ストリップのシーンは何かでそのまんま再現していたような気がします
何かと思い出す映画
中毒患者は仲間が欲しいんだね。だから夫婦で中毒患者になれば一緒に止めるか、止められないか、別れるしかない。甘い物、酒、タバコ、何でも共通する。だから誘惑したりされたりする度、この映画の事を思い出し苦笑する。
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