「アメリカの途方もない豊かさの中で出口を探してもがく青年と,成功者の...」砂丘 しょうけらさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの途方もない豊かさの中で出口を探してもがく青年と,成功者の...
アメリカの途方もない豊かさの中で出口を探してもがく青年と,成功者のお抱え秘書が砂丘で出会う話.青年は芸術的なセンスもハッカー的な技術を併せ持っていて,その常として集団主義的なあり方にも疑問を持たざるを得ない.共産主義革命を議論する学生たちをおしゃべりに興じていると批判しながらも,その活動に対してはある程度の共感を示し警官に銃を向ける.結局学生運動は,学生警官双方の損傷を引き起こしただけで大した成果も得られずに終わる.それでもなお出口を求める青年は,他人のセスナで砂丘へと向かい秘書と出会う.そこでは茫洋とした自然の中で無数の人間たちと同じように性行為に興じるものの,それは一時はアメリカの消費社会からの逃走を可能にするけれども,結局はまたロスに帰らざるを得ない.ロスに戻った青年はけいかんのてによって射殺されてしまうが,その機体には乳房とペニスのペインティングとともにNO WARの文字が記されているのは皮肉である.
いつの時代も若者の問題は現実からの出口がないことだったんだろうか.現実に出会う物事のほとんどが言語によって閉じられてしまっていて,驚くべきことが起こることはほとんど起こらない.その中で正しくガス抜きをするためには,新しく発明された商品を次々に試していくことによって,広告でコントロールされた出会いを消費していくことに書ないんだろうか.革命も犯罪もセックスもすべて,言語で閉じられた世界をこじ開けるためにあるが,その道の先には常に破滅が待っている.出口のない世界で破滅への誘惑をいかに回避するかということについて考えざるを得ない.
映像は詩的で,音楽もとてもよかった.構図も焦点の当て方も,意図的に配置された広告も,ザプリスキー・ポイントの雄大さもすべてが良かった.爆発のシーンのカラフルでブラーがかかっている映像をどのようにとっているのかとても気になる.特に印象に残ったのは,時間の経過についての癖で,サブリミナルに次のシーンを予知したり,衝撃的なシーンを繰り返し流したりすることの中には,私たちの現実の認識の仕方が再現されていると思わざるを得ない.よそくされた視覚を繰り返し見ているという自分の主観と一致していて,それをこのように表現するのかということがとても面白かった.