「日本の音楽教育は『サウンド・オブ・ミュージック』だったんだな」サウンド・オブ・ミュージック 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
日本の音楽教育は『サウンド・オブ・ミュージック』だったんだな
個人的な前提として。
- 『ドレミの歌』『エーデルワイス』は小学生の音楽の授業で歌っている。
- 『私のお気に入り(マイ・フェイバリット・シングス)』は京都へ行こうのCMでさんざん聞いただけでなく中学の吹奏楽部で演奏した記憶がある。
- タイトルにもよるがミュージカル映画は好き
- タイトルにもよるが古い映画も割と好き
- 一般的な人よりは映画を観るほう
- なんならミュージカル舞台も行かない人に比べれば行ってる
これらの条件を踏まえても『サウンド・オブ・ミュージック』本編をちゃんと観るのは2025年が初となった。俺ですらそうなんだからたいしてミュージカルに興味ない人、昔の映画を観る機会がない人は、これほどの有名作品でもなかなか観る機会がないと思う。
こんな話だったんだな。
ってか、驚いたのが『エーデルワイス』も『もうすぐ17歳』も『サウンド・オブ・ミュージック』から来てるのかよ!『もうすぐ17歳』も色々なCMで使われてるし。
映画を観る前から聞いたことある曲、歌ったことある曲がやたらあるの凄すぎるだろ。日本の音楽教育は『サウンド・オブ・ミュージック』だったんだ。
- 冒頭、山をとにかく映す。なんなの、山がそんなに重要なのか?と。マリアが出てきて歌いはじめて「山でよく歌う女が主人公ですよ」と示し。最後にナチスの追っ手から逃れる為に山を越える。この構成の見事さに名作たる所以を見た。
- 最初に延々と山を映してからの歌うマリアの登場。最初からこの映画がミュージカル映画であることを明確に示してくる。『サウンド・オブ・ミュージック』は「音楽の調べ」という字幕だった。「音楽の音」という味気ない訳にはせず音楽の調べにして音楽の響き、音楽の醸し出す雰囲気の意味をのせているのか。
- 子供達が軍隊式の挨拶をするやつ、どこかで見た覚えがある。多分パロディを先に観てる。
- 長女とその恋人が庭でイチャイチャしだしてからの『もうすぐ17歳』を歌いだすのめちゃくちゃビックリした。CMで聞いたことあるこの曲までこの映画からなのは知らなかった。
- 雷が鳴ってから、怖い時は自分の好きなもののことを考えろとマリアが子供達に呼びかけ始まる『私のお気に入り』が始まるキタ!感はすごかった。この小さな部屋からなんだ。小さな部屋から太平洋をこえて古都への旅行をうながすCM曲になったんだ。それを思うと元ネタを観れましたの感動がすごかった。
- なんで子供の数が7人なんだろうと思ったら『ドレミの歌』で一音一音ひとりずつあてるからかよ!という楽曲ありきっぽいきょうだいの数に笑う。いや別の意図があるかもしれないが。この『ドレミの歌』はかなり振付も映像も凝っていて相当自信があるのだなと感じた。音階覚えソングとしてあまりに定着してるもんな。
- トラップ大佐が『エーデルワイス』を歌いはじめたのにもビックリ。この作品からだったの?小学生の頃散々歌わされたのはこの映画の為だったんか!と思うほどに。何度も思う、日本の音楽教育は『サウンド・オブ・ミュージック』でできてんのかよ!
- マリアがこっそりと去ってしまう場面で一部終了。まさかの休憩あり!しかも5分!短くて2部最初の子供達の会話聞きながら入ってくる観客まあまあいたぞ!
- ナチス絡みの話だったことすら知らなかった。うっすら見た覚えすらないのでたぶん本当に初。
- 終盤、コンクールで歌い終えてからはずっとナチスから逃げるサスペンス展開になるのは意外で新鮮だった。今の映画だったら最後の山を越える場面で「どんな山も超えていこう」みたいな歌を歌い出すと思う。歌なしでエンディングをむかえたのはむしろ意外性があり良かった。
ということで60周年リバイバル上映をしてくれて助かる。
これ戦略的に子供の頃から大人になるまであらゆる場所にこの映画の曲を散りばめていたとしたらとんでもねえ策士だ。シンプルにこの映画が、このミュージカルが、この曲達が好かれてるということだと思うが。
「お人よしのジャパニーズに自分達の古い都を見たら雷逃げソングを連想させるようにしたぜ。外圧という雷に怯えながらアメリカが作った舞台、映画の曲を無意識のうちに愛でてろ」という風にも思えたのは個人的にはいい発見だった。
