「サイコスリラーの金字塔は伊達じゃなかった」サイコ(1960) ABフライさんの映画レビュー(感想・評価)
サイコスリラーの金字塔は伊達じゃなかった
サスペンスの巨匠ヒッチコックの代表作にしてサイコスリラーの金字塔とされる本作だが、今日的に観ても思う名声に恥じない傑作だと思う。
まず、サスペンスとして極上ものの出来。よくパロディされてる演出とかBGMってコレか〜! と、ちょっと感動した。確かにコレは後の定番になるのも頷ける。
サスペンスとしてよく出来ているのは演出だけでなく、展開も秀逸。一人目の犠牲者が出てからが本番みたいに語られることも多い本作だが、犠牲者が出るより前の最序盤から目が離せない展開が続き無駄な場面が全くなく、倒叙サスペンスとしても見応え充分のストーリーに惹き込まれる。そこから予想外の犠牲者が出て事件は序盤の倒叙サスペンスとはまた別の様相を見せ始め、最後の最後にはタイトルの意味とも繋がる衝撃的な結末が用意されていた。
ちなみに有名なシャワールームでの殺人シーンは安っぽすぎて全然殺人シーンに見えなかったが、有名シーンの元ネタが観れたのはちょっと嬉しかった。
正直、50年以上前の作品ということでいくら歴史的傑作だとしても今観て面白い代物とは言えないんじゃないかとあまり期待せずに観てみたが、最初から最後まで文句なく楽しい映画。
ただこの結末に関しては、確かに予想を裏切られるものではあったものの、演出(というかキャスティング)が少しアンフェアなのではないかとは思った。コレのせいで結末としては(今となっては)珍しくもない類のものにも関わらず予想できなかったというのもある。フェアにやろうとするとバレバレの真相になってしまうだろうから仕方ないのは分かるが、そこだけが残念だった。
とは言え、全体的な完成度を考えれば些細な傷。今観ても十二分に楽しめる最高のサスペンス映画だった。