「やっぱり、リー・マーヴィン!」殺しの分け前 ポイント・ブランク osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱり、リー・マーヴィン!
ストーリーの設計はヘンテコなのだが、ナゼか画面の中へ最後まで引き込まれる。
やっぱりリー・マーヴィンの魅力は特大級。
あの迫力ある最高のアクションはスクリーンでないとダメだろう。
ジョニー・マンデルの作った音楽も雰囲気とバッチリ。ハードボイルドも得意だったとはチョット以外。サントラあるかな?
そして、やはり60年代のフィルム撮影というのは、今更ながらやっぱりイイ。あの時代にしか出せない色味は勿論のこと、場面ごとのシーンの空気感まで見事に捉えていた。
フラッシュバックの唐突なインサートもこの頃の流行であるが、あそこまで多用されると一歩間違えばダメダメな外連味が出てきそうだが、
これもナゼか?この作品の必然に見えてしまうから不思議だ。たぶんノーランの『メメント』は影響を受けているのだろう。
その一方…
ラスボスの正体は途中でなんとなく分かるし、予告編で匂わせていたような現実と妄想が錯綜するような混沌とした展開も予想を下回る。
あの至近距離(Point-Blank)から数発も撃たれて助かる訳もないので、全ては主人公の死の間際の妄想と捉えるのが現実的とは思うが…
闇の中へとウォーカーがフェイドアウトしていった後、ズームインされるアルカトラズ島のラストショットは、そんなオチを示唆してるのだろうか?
と、いうことは…
『Point Blank』の”Point”とはアルカトラズの廃墟でもあり… “Blank“は、そこで亡霊のように消えゆくウォーカーでもあるという…
ダブルミーニング?
だとしたら、もうちょい、それを匂わせる伏線など、もう一工夫は欲しかった。
一応、女のセリフで「亡霊を追っかけて… その金で何するの?」なんてのはあったりするが…
というか、Point-Blankには、そもそも単刀直入や頭ごなし、といったような意味も含まれてるから、トリプルミーニング?
あと、思ってたほどの目眩くサイケ感もない。
色彩設定の拘りにゴダールの影響はありそうだが…
犯罪組織は徹底してグリーン。
ウォーカーは銀髪ヘアーでスーツもシルバー・グレー。
妻リンの服もアパートの室内もシルバー、その銀色が増幅する鏡面使いを多用。
妹クリスの方は金髪にハニートラップな予感の黄色い服。それに合わせて望遠鏡のカラーリングまで真っ黄色!などなど。
しかし、ヌーヴェル・ヴァーグ感は殆ど無い。たぶん即興的な会話が無い所為だろう。
というか、会話以前に、主人公のウォーカーは殆ど喋らず、説明的なセリフなど殆ど無い。
そのハードボイルドな抑制的な設定をベースとしつつ、ヌーヴェル・ヴァーグからの断片的な影響(他にも『突然炎のごとく』など)が本作の特徴とも言えるが…
正直、もっと上手く出来たのでは?トライした方向は面白かったが、ちょっと消化不良だったのでは?と少し欲求不満には思ってしまう。
これは同じように元ネタが好きすぎて、偏愛的にパクってしまう自由なタランティーノなんかを、もう随分前から観てしまっている所為なのかもしれないが。
とはいえ、しかし、なんだかんだで、全てのショットが抜群に本当に素晴らしい。
なんとも言いようのない独特の味わいがある。
不思議といえば不思議な映画である。
それにしても60sのファッションは、やっぱりイイ。
またミニのワンピースとかが流行ってもイイと思うんだけど。
暫くはないかな〜