コレヒドール戦記のレビュー・感想・評価
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米国の言わば負け戦を丁寧に描いている珍しいハリウッド映画
ジョン・フォード 監督による1945年製作のアメリカ映画。原題:They Were Expendable、配給:MGM映画会社。
米軍から見れば言わば負け戦の1941〜1942年のフィリピンにおける戦争を、戦争帰りのジョン・フォードが取り上げたのが興味深い。ジョン・ウエインは高速魚雷艇の艦長担う中尉で、マッカーサー及びその家族のコレヒドール島からの脱出劇を担った。そして、部隊の兵士たちを亡くす悲しみや負傷して戦線から外れる様が丁寧に描かれている。
日本巡洋艦が魚雷により爆破される映像はそれなりの迫力だが、勇ましい戦闘描写は無い。むしろ、空からすぐ近くまで降りてきて攻撃を仕掛けてくる零戦が恐ろしく、迫力が有る。
最後、ジョン・ウエインら将校30人のみは、再反撃を目指して飛行機でフィリピンを逃れるが,残された兵士たちは日本軍捕虜となり『バターン死の行進』となったと思うと感慨を覚えた。治療中に相思相愛となった看護師ドナ・リード少将が行方不明のまま終わってしまったのは、悲劇的な現実を踏まえてだろうが、ハリウッド映画らしくなく、少し悲しかった。
監督ジョン・フォード、脚色フランク・ウィード、原作ウィリアム・L・ホワイト『They Were Expendable』、製作ジョン・フォード、撮影ジョセフ・オーガスト、美術セドリック・ギボンズ、 マルコム・ブラウン、録音ダグラス・シアラー、編集フランク・E・ハル Douglas Biggs、作曲ハーバート・ストサート、アソシエイト・プロデューサー、クリフ・リード、第二班監督ジェームズ・カーティス・ヘヴンス。
出演 ロバート・モンゴメリーLt.John_Brickley、ジョン・ウェインLt.(j.g.)Rusty_Ryan、ドナ・リードLt.Sandy_Davyss(『素晴らしき哉、人生!』等)、ジャック・ホルトGeneral_Martin、マーシャル・トンプソンBoats_Gardner、ポール・ラントンEns.Andy_Andrews、レオン・エイムズMajor James_Morton、Arthur WalshSeaman_Jones、ドナルド・カーティスLt.(j.g.)Shorty_Long、キャメロン・ミッチェルEns.George_Cross、ジェフ・ヨークEns.Tony_Aiken、マレイ・アルバーSlug_M。
敵がいない戦争
1945年。ジョン・フォード監督。太平洋戦争緒戦のフィリピン諸島。高速魚雷艇の乗組員たちは戦いたくてうずうずしているが、作戦上なかなか出番は回ってこない。徐々に後退を余儀なくされるなか、移送と護衛というあまり名誉でない任務を任されることに。一方、血の気の多い中尉は怪我で病院送りとされ、そこで出会う看護師と不器用な恋に落ちて、、、という話。
戦争という国家の名の下でもっとも個性が奪われて組織が優位に立つ状況で、階級や組織とは関係なく個人的なつながりが生まれ、国家とは関係なく団結していくこと姿を丁寧に描いている。「敵」はもちろん大日本帝国なのだが、「敵」が現れて複数性が抑圧され、同一性が勝利するのではない。敵の姿は映画のなかでほぼ描かれないが、それは感情移入を防ぐためではなく、敵を描こうとすればその複数性も描かざるを得ず、映画として成り立たないからだ。西部劇でしばしば原住民がそのように扱われているように。描かれている日本人は、戦争開始の時点でフィリピンの米軍パーティのなかにいてなぜか編み物をしている女性だけなのだが、これがいかなる意味でも「敵」ではないのはいうまでもない。
敵のいない戦争映画のなかで、人々はそれぞれの複数の人生を生きている。
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