ゴダールの探偵のレビュー・感想・評価
全3件を表示
上等な娯楽映画
ユニークで面白いと思った。 娯楽映画という感じがする。にしてはとても上等な娯楽映画だった。 一見、シリアスな雰囲気だけれど、皆、どこかが陳腐に感じた。重厚な場面であればあるほど、どこかおかしい。挿入されているクラシック音楽、それもとても素敵なのだけれど、やはりそう感じてしまう。 ストーリーのオチが最も象徴的だった。 考えてみれば、現実にわたしたちのしていることは、見方を変えればこのように変なものなのかもしれない。筋や法則が通っているようにみえて、何のことはない、ごく単純な動機や、あいまいに揺れ動く感情が絡み合い、全体が複雑に変になってしまっているだけ…そんな気がしてくる。 そういった風刺的な視点をこの作品に感じるわけだけれど、そうでない芸術的、美的な側面もあるところが好きだ。 たとえば、重厚な音楽に重なるように流される文章の朗読。言葉の響きとは、男女の声の調和とは、こんなにきれいなものだったのか、と驚かされる。 登場人物それぞれの描写も味わい深い。 わたしたち、ハチャメチャで筋は通ってないのかもしれないが、このように、なかなか美しく味があるものなのかもしれないわけで…。 それに、男女の愛情というものが確かなものとして作品の底辺に保たれている。この点に温かみを感じるし、人間もまんざら捨てたもんじゃないの、という気にもさせてくれるわけで。
ゴダールの独断
孫を連れたマフィアらしき老紳士、ボクシングのプロモーターから八百長に挑むボクサー、殺しを請負う機長と金絡みの妻、殺人事件を追う探偵と大人の女性手前な少女たち。 登場人物たちが入り乱れる人間模様に群像劇らしき物語は皆無、フィルム・ノワール漂う雰囲気からサスペンスにも至らない、コメディ要素が尾を引きながらゴダール特有の知的な哲学が散りばめられていて訳が分からなくなる!? 話の筋が読める序盤からそれぞれの目的から逸れているような中盤、何もスッキリしないままに雑な銃撃戦からのオチにもならない終わり方、女性を描く手腕に長けているゴダールな印象だけが頭に残る。
全3件を表示