劇場公開日 1952年10月9日

「お斎の席で渡辺の謎の行動が解き明かされていく」生きる(1952) 2nd Life Storiesさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5お斎の席で渡辺の謎の行動が解き明かされていく

2024年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

公開は1952年。
その7年前の戦時中であらば「生きる」意味はまったく変わっていた。
ガンの宣告は今では当たり前だが、つい最近まで
精神的な負荷を考えて本人に宣告をすることは稀だった。

死と向き合うことは人生の一大事だが、
戦争ではなく、病気と向き合って死に行くという、
当たり前の日常を新鮮に描いている。

まだ戦後復興の槌音が響く平和の時代を背景に、
登場した事なかれで無気力な役人や、裏社会と結びつく幹部。
平和の中にこそ芽生えた新たな社会の病理を描くことで
新たな時代の生き方を浮き彫りにした作品といえる。

今では見られなくなった自宅で催されるお斎の席上には
渡辺と最後の時間を共有した人々が次々と訪れ、
渡辺(志村喬)の謎だらけの行動が徐々に解き明かされていく。
同僚の役人たちが渡辺の生き方に絆されていく場面は、実に圧巻である。

渡辺が示した生き方。実は多くの日本人が共有していたといえる。
それが奇跡の復興とその後の高度成長をもたらした、
といってよいのではないだろうか。

2nd Life Stories