「死ぬまで「生きる」ということ」生きる(1952) 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
死ぬまで「生きる」ということ
「生きる」
1952年公開。
監督:黒澤明。
生きるということは、死ぬまでは生きる。
そういうこと。
主人公の渡邊(志村喬)は30年間市役所に勤続する市民課長。
自分が胃癌で余命が半年程しかないことを悟る。
心は千々に乱れて、生きた心地がしない。
誠に往生際が悪いのだが、非常に人間的である。
若い市役所の女性職員のとよ(小田切みき)にしか本音も言えず、
彼女にケーキや汁粉、すき焼きを奢るのが唯一の息抜きで、
とよの生命力が心から羨ましい。
とよと過ごす時間が生き甲斐になる。
つらつら考えるに全く無為な市役所での30年間勤務。
心には虚しさしかない。
渡邊の後悔の思いは映画の1時間22分まで続きます。
そして小田切みきにハッパをかけられて一つの仕事を成し遂げてから
死のうと決意するのです。
近隣の主婦たちの以前からの陳情。
汚水の溜まる空き地を子供達の遊び場に再開発する。
主婦たちの陳情は、役所で10回以上盥回しにされます。
公園課→いや土木科へ→嫌、衛生課→会計課→造園課→またしても土木課、
全く埒が開かない。
そして遂に渡邊は死を賭して駆け回るのです。
一番の反対勢力は小狡い助役(中村伸郎)
ともかく粘る、諦めない。
「まぁ、そこをなんとか・・・」
「どうかご一考を・・・」
相手が根負けするまで、頼み倒す。
後半は意外や、渡邊が公園建設を決意した所で、突然通夜の場面に変わる。
5ヶ月後、渡邊課長は死亡して
通夜の席です。
そして公園建設は誰の功績なのか職員たちは口々に話し始めます。
そして回想映像が交互に挟まれて、渡邊が胃の痛みを堪えつつ、
各課に掛け合う様子や、現地見学、そして大掛かりな造成工事が始まる。
ダンプカー、コンクリートミキサー、
ぬかるみに砂が撒かれ、徐々に遊具が備えられ、
公園は形を成して行く。
見守る主婦や子供たち。
公園は着々と仕上がって行きます。
「生きる」と言えば志村喬の歌う「ゴンドラの唄」
“命短かし恋せよ乙女“
“紅き唇 あせぬ間に“
“熱き血潮の 冷えぬ間に“
“明日の月日は ないものを“
感動的なラストかと思うと、
市役所の事務室では、少しも変わらずに、部署へのたらい回しが
行われている。
あくまでも役所の官僚主義を皮肉り、
職員の「事なかれ主義」を皮肉る、
リアリズム映画でしたが、
「ゴンドラの唄」の余韻はリリシズムに満ちていました。
ビル・ナイの主演でリメイクされたそうです。
どんな「生きる」なのか、楽しみです。
本作わかりやすくまとめていただいたレビューですね。 皮肉が込められていても、哀愁漂い懐かしさのある作品でしたね。
市役所ってこんなに上昇志向ありで人の手柄横取り当たり前なんでしょうか。今はどうなのでしょう。70年前でも人の気持ちは変わらないのでよく似たものでしょうか。仕事を後回しにする、できるというのもお役所仕事故でしょうか🦁
変態仮面、以前に観た時は、
驚きが大きくて。
今日見たらおもしろかったです。
愛子さん役、出家した人だったんですね。そのドラマは観ていません。同性愛役の作品今夜放送なので。寝てしまいそうですが。🦁
こんばんは♪
共感とコメントありがとうございました😊
『タクシー運転手』早速鑑賞されたのですか。迅速❣️
wowowで韓国サスペンスかミステリー特集があるので作品チェックしておきます。気温上がると困るのが、虫の出現。蚊飛んでました。そちらはこれからいい気候ですね🦁
こんにちは♪
暑いです🥵がいかがですか。
コメントありがとうございます😊
ちゃんとできてから、と、思ってただ、あらすじ書いただけみたいで、修正する気だったのですが、
エネルギー不足で、一秒の彼も
もう一度観ないとなぁ、とモタモタしています。後でちゃんと拝読させていただきます。🦁
琥珀糖さん、コメントありがとうございます。
ミュージカルが好きで年に数回上京しています。昨年は「エリザベート」と「キンキーブーツ」、今年は「ハリー・ポッターと呪いの子」を観劇しました。歌と演出に注目して楽しんでいますが、どれも素晴らしかったです。観客の殆どは女性ですね。黒澤映画では、この「生きる」と「羅生門」が優れていると思います。名作の「七人の侍」「用心棒」を劇場見学していないので心苦しいのですが、どんな作品でも黒澤監督の純粋な映画愛と真摯なメッセージには心打たれます。特にこの「生きる」の普遍性は、時代は勿論国境も超える内容から、後世に語り継ぐべき日本映画の遺産と云えると思います。