劇場公開日 1952年10月9日

「「どう生きるべきか」という問いを真正面から描いた作品」生きる(1952) neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「どう生きるべきか」という問いを真正面から描いた作品

2016年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

幸せ

黒澤明監督による『生きる』は、死を目前にしたひとりの男が、虚無の淵から小さな希望へと向かって歩き出す姿を描く――というだけの話ではない。本作は、観る者自身に「どう生きるべきか」を真正面から問いかけてくる作品である。

前半は、死の恐怖に囚われた渡辺勘治(志村喬)の無力な姿が続き、不安と倦怠に満ちている。しかしある日、若い女性(小田切とよ)に強く惹かれ、彼女に「なぜそんなに元気なのか」と問い詰める。返ってきたのは、「ただ普通に働いているだけ」というあまりに素朴な答えだった。だが、その言葉をきっかけに、渡辺は「人のために働くことこそ、生きる意味なのではないか」と気づき、そこから彼の人生が一変する。

それまでとは打って変わって、渡辺は小さな公園の設立に全力を注ぐ。命の残り火を燃やすように、愚直なまでに一つの仕事をやり抜く。その姿は派手ではないが、静かな感動と揺るぎない意志を感じさせる。

やがて彼が亡くなり、葬儀の席で同僚たちは彼の行動を一時的には讃えるものの、次第に「自分たちには無理だ」と言い訳を重ね、やがて日常へと戻っていく。

ただひとり、若い職員・日守新一(あだ名は「糸こん」)だけは違っていた。ラストシーン、彼は渡辺が作った公園を見下ろしながら、静かに立ち尽くす。その背中には、何かを確かに受け取った人間の重みがある。

『生きる』は、単に再出発や感動を描く作品ではない。死を見つめたことで初めて気づく「本当に意味のあること」を、観る者に手渡そうとする真摯な作品である。

(2026-02-13)
「死ぬことは生きること」
フルHDでの鑑賞です。
嶋田久作のメフィスト↓、天真爛漫な部下の女の子↑と悪魔と天使が登場します。
そして、ハッピーバースデイの歌とともに天使に救われます。
後半、志村喬が死んでから少しだれますが、「次長と言え!」のセリフで見ている側も一喝されます。
黒澤監督らしいやや説明し過ぎのくどい演出が気になりますが、やはり名作でしょう。
92点。

neonrg
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