「逃げ場を求める男」生きものの記録 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
逃げ場を求める男
終戦直後は、お妾さんがいても、それほど大騒ぎにはならなかったと、母方の婆ちゃんに聞いた事があります。映画の公開が昭和30年。広島・長崎への原爆投下は昭和20年ですから、わずか10年後。米ソが核兵器開発を競っていた時代。その7年後がキューバ危機。笑えないし、まんざら狂気とも思えない。実際、核シェルターを築造した官民が、どれだけ居た事か。いや、居る事か。
黒澤明作品を見て、常に思う事は、その「画」の素晴らしさなんです。
冒頭。走る路面電車のパンタグラフを追いかけつつ、「歯科」の看板を上げたビルで止まるカメラ。ズームして行きながら、カメラは窓枠を超えて行く...いや、実際は超えられないので、「超えて窓の中に入って行く、そこに歯科医の姿」と言う表現。
ラスト。精神病棟の階段を下りて来る志村喬さんと、上って来る根岸明美さんの姿を左右にとらえる構図。二人は踊り場ですれ違い、今度を背を向けて登っていく根岸明美さんと、同じく背を向けて降りて行く志村喬さん。階段を下り終わり、上り終わり、同時に歩む方向を変える二人。
これを映像芸術と呼ばずして、何を映像芸術って呼べば良いのでしょうか?
黒澤明の、構図と人物で創る「動く絵画」は、本当に素晴らしいです。
邦画、頑張ってよ。
などと。昔の日本映画を見ると、そう思ってしまうことばかり。
だってですよ。今週末見た、あれとか。先週のあれと、あれとか。黒澤の子孫である日本人が撮った映画だなんて、思いたくないw
やっぱり黒澤は素晴らしい。
ちなみに。
今の時代、核兵器は、それを無力化する手段を持っていれば脅威ではありません。有事に際しては、逃げずに無力化する行動を取るしかありません。国際司法裁判所の裁定を「紙屑」と吐き捨て、南シナ海に基地を4つも作った隣国は、「次の10年間で核兵器を10倍に増やす」と、昨年公言していますが、知らない人多過ぎです。