「黒澤映画を模範としたマカロニ・ウェスタン先駆の秀逸は、モリコーネの音楽とイーストウッドの個性」荒野の用心棒 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
黒澤映画を模範としたマカロニ・ウェスタン先駆の秀逸は、モリコーネの音楽とイーストウッドの個性
イタリアで制作された西部劇、マカロニ・ウエスタンの先駆的作品として映画史に遺る娯楽西部劇の代表作。マカロニ・ウエスタンは1963年から1973年の10年間に数多く制作され隆盛を極めました。個人的には大人向けの劇映画に興味をもった1970年頃から、視聴率が見込めるジャンルとして日本のテレビの洋画劇場で放送されることから、鑑賞の機会を得ることが出来ました。その中で13歳の中学時代に観た、このクリント・イーストウッド主演作と続編ではないもののフランコ・ネロ主演で馴染みの高い日本題名「続・荒野の用心棒」(1966年)の2作品には面白かった記憶が残っています。
しかし、54年振りに観直して殆どのシーンを忘れていたのは、まだ映画日誌を書く目的で真剣に観ていなかったからです。それでも音楽を担当したエンニオ・モリコーネの口笛やコーラス、銃声などを取り入れたテンポ良いメロディの快活さ、主演クリント・イーストウッドのスタイリッシュな佇まい、そして目を覆いたくなる残酷な殺戮や暴力のシーンを特徴とした西部劇の見応えは、今回も充分味わえました。刺激の強いシーンは当時驚きを持って見ていたと思うのですが、その後の表現の多様化で免疫ができたのか、嫌悪感は無くなりました。
黒澤明監督の名作「用心棒」を模範にした脚本は、日本公開の1965年に著作権侵害として裁判になり敗訴している逸話から、良くも悪くも丸写しの評価しか出来ません。それでも西部劇に巧くアレンジしていると思います。勢力争いをする二つの組織を巧妙に渡り歩き、人質の家族を救い、奪われた金塊をメキシコ政府に返す。それをクールで思慮深いガンマンが頭脳戦で勝ちとる面白さ。イーストウッド独自のスマートな個性が生かされています。クリント・イーストウッド(1930年生まれ)はこの時34歳の遅咲きの抜擢でした。今や名監督と名優の両立を成し遂げ、生きて伝説化した映画人と言っても過言ではありません。アクション俳優で活躍した初期の作品の中で、1967年のイタリア・オムニバス映画「華やかな魔女たち」では、ヴィットリオ・デ・シーカの演出で出演しているのを観て大変驚きました。その理由が、この劇映画初出演のイタリア映画がアメリカで公開されたのが、制作から3年後の1967年だったことを知り、納得しました。「夕陽のガンマン」(1965年)と「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」(1966年)もまとめて1967年に公開されて、漸くアメリカ映画界でイーストウッドにスポットライトが当たったといいます。
イタリア版の原題が『Rer un pugno di dollari/ほんの一握りのドルのために』で今回BS視聴したのはアメリカ版で『A Fistful of Dollars/一握りのドル』です。モリコーネの音楽とイーストウッドの演技、それに個人的に好きなジャン・マリア・ヴォロンテ(1933年~1994年)の悪役振りに星を捧げたいと思います。
淀川長治さんが命名したと言われるマカロニ・ウェスタンは、500作品を数えるとありますが、その殆どが娯楽に徹したプログラムピクチャーと思われます。学生時代に観て個人的な映画日誌に記録した作品を上記以外で並べてみます。
「続・さすらいの一匹狼」(1965年)「南から来た用心棒」(1966年)「怒りの荒野」(1967年)「新・夕陽のガンマン/復讐の旅」(1967年)「豹/ジャガー・地獄の用心棒」(1968年)「暁のガンマン」(1968年)「バスタード」(1968年)「荒野の大活劇」(1969年)「復讐のガンマン/ジャンゴ」(1971年)
イタリア俳優のジュリアーノ・ジェンマ(1938年~2013年)が日本でも人気が高く、日本公開作品も多かったと思います。
共感ありがとうございます。
マカロニウエスタンの勝手なイメージ、砂が黄色い、顔が汚い、食べ方が汚い。だからイーストウッドやジェンマのフェイスが引き立つんでしょう。

