荒野の七人のレビュー・感想・評価
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「正義のガンマン」なんて存在しない
黒澤明監督の名作時代劇『七人の侍』(1954)の西部劇版リメイク。
監督は『OK牧場の決斗』(1956)のジョン・スタージェス。そのためか、クリスのセリフには「トゥームストーンから来た」なんてクスグリも。ヴィンのいたダッジシティもワイアット・アープゆかりの地。
セルジオ・レオーネ監督が『用心棒』(1961)を翻案した『荒野の用心棒』(1964)と異なり(盗作といわれることが多いが、イタリア側の事前の申請を東宝が無視したという説も)、本作は正式に許可を得ており、オープニング・クレジットにも「baced on the Japanese film “SEVEN SAMURAI”」の文言が確認出来る。
筋書きだけでなく、勇壮なテーマ曲を作ったエルマー・バーンスタインも劇中で早坂文雄の旋律を部分的に拝借している。
重い印象の残るオリジナルのラストとは違い、たくさん人が死んでるのにハッピーエンドに持ち込むのは西部劇の従来のパターン。一方で、序盤に先住民の埋葬を巡りひと悶着あるのは当時の公民権運動の影響だろうし、ほかにも旧い西部劇からの脱却が認められる。
銃を買い付けに来たメキシコ人から助言を求められたクリスは「ガンマンを雇え」とアドバイスするが、アメリカにおけるgunmanは殺し屋とほぼ同義語で、ならず者を指す言葉。正義の銃使いはガンファイター、もしくはガンスリンガーと呼ばれ区別される。
つまりは「毒をもって毒を制す」戦法。正義感だけでは悪党に立ち向かえないことを農民に示唆している。
言ってるクリス本人も黒ずくめの衣装にスキンヘッドと、本来なら悪役の出で立ち。本作が「良き友、良き父、良き夫」を主人公にした勧善懲悪のアクション・ヒーローものではなく、ピカレスクムービーの側面を持つことの視覚的な暗示になっている。
結局、集まった顔ぶれのほとんどが金で殺しを請け負った経験のあるアウトロー。菊千代以外は武士で構成されたオリジナルとは異なる趣き。
メンバー個々の設定も、勘兵衛に相当するリーダーのクリスと久蔵に相当するナイフの達人ブリット以外は再構築されているなど、細かい異同を挙げればキリがないが、いちばんの相違はオリジナルの野武士(野伏せり)がほぼ無個性だったのに対し、本作の山賊の頭目カルヴェラはよくしゃべるし人間臭い所もあるなど、ステレオタイプの悪党ではなく極めて個性的。登場時にいささか左翼的な主張を展開するのは、当時の冷戦体制を反映しているからか、それとも赤狩りの揶揄なのか。
カルヴェラを演じたのはアクターズ・スタジオ出身のベテラン俳優イーライ・ウォラック。貫禄の演技で若手俳優を圧倒している。
『おしゃれ泥棒』(1966)のセレブや『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1990)のマフィアなど幅広い役柄で知られるが、彼のベスト・パフォーマンスは『続・夕陽のガンマン』(1966 原題THE GOOD, THE BAD, AND THE UGLY)のトゥーコ。本人も気に入っていたのか、自伝のタイトルは“THE GOOD, THE BAD, AND ME”。
ブルックリン生まれの生粋のニューヨーカーなのに、メキシカン役がよく似合う。
ウォラックを含め、ユル・ブリナー、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンの合計四人がのちにマカロニ・ウエスタンに出演しているからか、本作をマカロニ・ウエスタンの原点と位置づける媒体もかつてあった。
レオーネの大作西部劇『ウエスタン』(1968)からのオファーに躊躇していたヘンリー・フォンダに『絶対出ろ』と決断を迫ったのは親友のウォラック。そして今度はフォンダが『夕陽のギャングたち』(1971)への出演を迷っていたコバーンに「いい経験になるから」と背中を押している。
一般的にあまり知られていないが、裁判で早々に白旗挙げて権利面で譲歩した『荒野の用心棒』に対し、本作は正式なリメイクにも拘わらず黒澤を含むオリジナルの脚本陣の権利を無視したことや、ビデオ時代の到来で発生するあらたな権益を巡り日米間で泥沼の法廷闘争を繰り広げることに。
リメイクなのに多くの派生作品が存在する本作。この時の顛末も映像化出来そうな気がするが、その際のタイトルは是非“FOR A HUGE DOLLARS MORE”に。
BS12トゥエルビにて視聴。
侍をガンマンに…心躍る西部劇
佳作
西部劇の最高傑作の1つだ。
黒澤明監督『七人の侍』を、西部開拓時代のメキシコに移してリメイクした西部劇。盗賊団の襲撃に悩む村に雇われた、7人の男たちの奮闘を描く。
本作は、『七人の侍』が持つさまざまなテーマを継承しつつ、古典的な西部劇を踏襲した、見事な成功例だと思う。魅力的なキャラクターを演じたキャストの好演と、エルマー・バーンスタインの音楽も印象深い。
メンバーを集める過程や、襲撃に備えた訓練の描写が、やや平板かなと思う。しかし全体を見れば、野性味にあふれた面白さに満ちているし、荒々しさと華々しさ、ロマンスとユーモアが融合した、素晴らしい一大活劇だ。
伝統的な西部劇の奔放さも受け継いでるし、なるほど『七人の侍』をハリウッドが作ったらこうなるよなと思える作品だ。『七人の侍』とは、それぞれが傑作だし、西部劇の最高傑作の1つだと思う。
0001 生まれた年の映画だってさ
てことで拙の生まれた年からのレビューを
地味に作成していきたく。
1961年公開
ガキの頃には土曜映画劇場にて前編後編でよく
オンエアされました。
ウキペによると1974年が初回放映。128分。
当時のテレビ放送枠は2時間でスペシャル版時間などは
設定しておらずバッタバッタ切りまくって90分に抑えて
放送しており、128分って前後編にわけるほどの尺でもなく
に対しこの土曜映画劇場だけ1時間半枠。
前後編にわけるにはちょうどよかったのですね。
筈見有弘の名調子解説が光る。
エルマー・バーンスタインが書き上げたテーマ曲は、雄大で
これぞ西部劇音楽!
ユルブリンナーはヒーローなのに何故ハゲなのか?
少年は不思議でなりません。
マックイーンもブロンソンもコバーンもワグナーも公開時は
無名の域だったと思うがテレビ鑑賞時は大スターだったわけで
豪華さが増しました。
黒澤明原作でなかったとしても
永遠に残ってほしい映画の一本です。
80点
西部劇でよみがえった「七人の侍」
素晴らしいリメイク作品!
黒澤明の「七人の侍」が映画史上に残る名作であることは間違いないですが、そのリメイクとしてこれ以上ないくらい素晴らしい作品でした。
まず原作に対するリスペクトを物凄く感じました。見せ所、伝えたいメッセージ、ストーリー等はほぼほぼ七人の侍。しかし、ただの真似事ではなく、西部劇としてのオリジナリティ溢れる仕上がり。
ガンマン。それは男達の生き様であり死に様である。人間臭く、愚かで、気高く、愛がある。もうね、いちいち言動がかっこいいのよ!観ながらかっこよすぎて笑い転げてました。仲間を集めるシーンで「何人集まったんだ?」に対して指を一本立てる主人公。それに対して無言で指二本で返す…!なにこれ!カッコよすぎてびっくりしたわ!
七人の侍では侍と農民の対比が描かれていましたが、今作ではガンマンと農民の対比。農民へのリスペクトには人間愛を感じました。
七人の侍の凄さを改めて実感しつつも、荒野の七人はそれとは別の魅力で溢れていて素晴らしい作品でした。
…ちなみに、どうでもいいことだけど荒野の七人に興味を持ったのは筋肉少女帯の「坊やの七人」を聴いたからです(笑)大槻ケンヂ、ありがとう(笑)
男気のある敵ボスを裏切る邪悪な7人
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定期的に同じ山賊に襲われる村の人が町へ銃を買いに行く。
そこで正義感の強い主人公を見つけ、用心棒として雇う。
まずは主人公が仲間集めをし、計7人となった。
そして銃の使い方なども、色々指導してもらった。
やがて山賊がまた村へ来るが7人の活躍で撃退。
しかし村人らは報復を恐れて戦う意欲をなくしてしまった。
そんな折、また山賊が現れて不意討ちされ、全員捕らわれる。
こうして村を去る事を約束させられた7人は釈放される。
しかしその道中で突然また正義感に火がついて村へ。
そこで最後の戦いとなり、敵を滅ぼすが4人が死亡。
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うーん、この作品で最も共感できるのは敵のボスやなあ。
略奪は悪いけど、そんなに残酷ではないし根こそぎ奪うわけでもない。
しかも7人を捕らえた時も、殺せたのに殺さなかった。
別の仲間からの報復を恐れた部分もあるだろうが、同情もあったのだろう。
村人らの前で銃を取り上げたのも、それは村人の前での彼のポーズだった。
小さな声で、後で返すからとささやいたのだ。
しかも7人が去った後で、部下に追いかけさせて本当に銃を返す。
何と筋を通す人なのだろう。なのに7人はこの人を裏切る。
ボスが銃を本当に返してくれたのに、その銃を持って村に引き返す。
ボスは手下らと共に、率先して前線で戦う。何と男気のある男!
そして結局殺されるが、死に際も実に潔い。
村人がみんな戦うのを諦めてる中、7人はわざわざ戻る意味ある?
この7人は自己満足のために男同士の約束を破ったのだ。
好きですね。
荒野の七人の侍‼️
ハリウッド版『七人の侍』
音楽ってめっちゃ大事なのね、むしろ主役って言っても過言じゃないのよん
この作品、私如きの腐れレビューで汚しちゃけないって思ってたの。
こういう「超一級作品」にぶち当たっていつも思うことです。
でもせっかくなので、過去に視聴映画のレビューは、思い出し補正でさらっと書いておきたい気持ちになってきて。
その第一弾ってところかな。
もはや語ることもないですよね、ストーリーの面白さは。
起!承!転!結!&勧!善!懲!悪!の王道中の王道ストーリーですよ。
お気に入りキャラはナイフ使いのブリット。
原典『七人の侍』でのポジションなら久蔵ってところ?
リメイクの『マグニフィセントセブン』ならビリーに継承されたってところ?
でもね、それと同等以上に思ったのは音楽の重要性。
この映画の音楽って知らない人っていないんじゃないかな?
単調かつ勇壮なメロディーのリフレイン。
これ、実は名作の必須条件だと思うの。
『大脱走』のマーチだったり『ロッキー』のテーマだったり『インディージョーンズ』シリーズだったり、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』シリーズだったり。
近年で名作と呼ばれる作品も多くあれど、これほどまでに音楽に恵まれた作品ってあまりないんじゃないかな?
印象的な音楽に恵まれた作品って、もれなく名作の殿堂入りですよ。
あれぇ?逆なのかな?名作だからこそ、音楽が印象的に耳に残るからなのかな?
どっちでもいいや!
「いやぁ、音楽って本当にいいもんですね~」←しれっと逃げやがった!
損得より、義侠心
七人の侍より優れたものもある
何と言ってスターが揃っている!!
七人の侍のスターといえば三船敏郎くらいだがこちらは違う。ユル・ブリンナーを始めスティーブ・マックイーン、ジェームス・コバーン、チャールズブロンソン・・・。これらの俳優が輝いていて、彼らが次から次へと出てくるので見ていてワクワクする。多分この四人は名前を全く知らない若い人が見てもとても魅力的に見えるに違いない。とにかくユル・ブリンナーは黒い服が似合いすぎる。若いガンマンに「お前にできるか?」てやらせてみて、その直後に自分がやるところなんか超かっこいい。スティーブ・マックイーンは持ち前のいい味出している。主役でないのにまるで主役のようだ。ジェームス・コバーンが渋すぎる。ほとんど喋らないのにキャラ立ちすぎている。そして何と言ってもチャールズ・ブロンソン。子供達に愛される怖い顔のチャールズ・ブロンソンが私は大好きだ。そして怖い顔の彼が本当に怖い顔で怒るシーンが一箇所だけある。・・若い頃は彼が怒る意味がよく分からなかったんだけど、自分が子育てが終わる世代になってくるとだんだん分かってくるというもんだ。あのシーンが一番いい!!
七人の侍は芸術映画という感じで気合を入れてみないといけない。それに対して荒野の七人は酒を飲みながら、おしゃべりしながらでも見れる娯楽映画で見やすい。若いガンマンが主人公になっていて普通に共感して見れる。七人の侍でやらなかったもう一つのラストシーンという感じでまとまっている。それから七人の侍で最後に生き残った官兵衛が言うセリフと荒野の七人のラストで長老がいうセリフとが、いかにも芸術映画と娯楽映画の違いという感じで・・・思い出しても楽しめる。
長い映画だが途中で休憩しても全然問題ないし、ぜひ多くの人に楽しんでほしいものだ。
ハリウッドの名作リメイク
ガンマンは後悔をしないのだ!
七人の凄腕ガンマンが、野盗軍団と戦う物語。
黒沢のリメイク物ではあるが、 作品のオリジナリティの高さと完成度からして、もはや別物だ。 この映画の制作に関わった人たちが、七人の侍から受けた衝撃の大きさとリスペクトが感じられる。 名作に触発されて生み出された名作、と言っていいだろう。
大好きなセリフがある。 野党の親分が七人のガンマンに仲間にならないかと持ちかけ、 それをマックィーン扮するヴィンが断るシーンだ。 野党の 親分としては、 金にもならない仕事に命をかける七人が理解できず、 「なぜそんな仕事を引き受けるんだ?」 と怪訝な顔で聞く。それにヴィンが答える。
「俺の友人に昔、 裸でサボテンに飛びついた男がいたんだ」
親分 「そいつは、なんでそんなバカなことをした?」
ヴィン 「おれもそう聞いたよ」
親分 「なんと言ったんだ?」
ヴィン 「そのときは、それでいいと思ったんだそうだ」
つまり、七人のガンマンたちも、「それでいい」と思ったから、この割に合わない仕事を引き受けた、ということだ。 男の決断には、金も名誉も屁理屈も必要ない、 もちろん後悔もないのである。
「約束だから」 も違う。 「義務だから」 も違う。 「農民たちを助けたいから」 でもない。
「それでいいと思ったから」
これなのだ!
七人のガンマンの侠気を言葉で表すには、 この言い回ししかない。 マックィーンが言ったからなおさらだが、 見事なほどにカッコイイ台詞なのである。
恥ずかしながら、私は実生活でこのセリフを使い倒している。 過去を悔やむような事があり、いつまでもイジイジと後悔に耽っているとき、 自分の頬を力いっぱい張ってこう言うのだ。
「あんときは、あれでいいと思ったからああしたんだろう!」
これによって、私は一瞬にして「女々しい男」から、「荒野の男」へと戻ることができるのである。
百姓よりもガンマンの方がいい。 バカでもいい。 自分のケツは自分で拭える、後悔をしない男の生きざまを貫きたいものだ。
農民強くないか?
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