「得とも言えないあの感覚を視覚化する」光年のかなた YYYさんの映画レビュー(感想・評価)
得とも言えないあの感覚を視覚化する
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老人がプレハブ小屋でやっていることは分からない。教えてくれない代わりに提供されるのは気まぐれで決まる仕事と僅かな食事、そして退屈な時間だ。
そして青年は徐々にその時間の処理方法を覚え始める。ガソリンタンクと崖の間をラン&キック&ターンを繰り返したり。
仕事をしてもそれが社会と接するわけでもない(これを仕事というかはまた別な問題)。他にやることがないから、仕方なくやっている惰性感と長く感じる時間。それがこの作品においては、躍動感に結びつける。この処理の方法はこれまであまり触れてこなかったような気がした。
老人の家に向かう前の寒い朝、「寒い」という感覚を足の裏を手でスリスリ擦ることで視覚化する。肩を縮こませて手のひらをあっためることは取り上げられない。
酒を飲んで夜が明けてしまった時のあの感覚。酔った勢いで自宅のベッド以外で一夜過ごしてしまった後のあの感覚。きっとタネールは、こういった言語化できないけど誰もが感じたことあるあの濁った感じを視覚化できる監督なのだろうな、と鑑賞しながら考えた。
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