劇場公開日 2022年8月19日

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「パイン缶とカリフォルニア」恋する惑星 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0パイン缶とカリフォルニア

2020年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 人から勧められ続けて早25年。ようやく見ることができました。ミニシアターブームの起爆剤になったという今作。この映像の虜になるのもわかるし、スタイリッシュ、ファッショナブル、何度でも鑑賞に耐えうる圧倒的映像力を感じさせてくれます。

 モウ刑事、233号の食欲とジョギングは凄まじい。それと金城武本人のマルチリンガルぶりも発揮されていました。パイン缶を一晩に30缶平らげ、バーで飲み続け、ホテルに入ってからもサラダを4皿。健康的なのか不健康なのかさっぱりわからないが、ドラッグディーラーの女についてもわからないまま。この謎めいた雰囲気がいいんですよね。

 そうして次のパート、トニー・レオン演ずる663号。CAの元カノから別れを告げられ、手紙とともにアパートの鍵もファストフード店に預けられる。店長のいとこの新人店員フェイが入手して、「遊びにおいでよ」の言葉を素直に受け止め、留守中に忍び込んで663号の部屋を掃除する毎日。663号としても、いつ彼女が戻ってくるかという期待していたため、簡単には気づかなかったのだろうか・・・

 単に2組の警官の恋物語なのに、こんなに不思議な感情に心揺さぶられるのだろう。男の願望、可愛い女と怖い女、ファストフード店“ミッドナイト・エクスプレス”のインド人の店員たちも効果的で、雑居ビルである重慶大厦の多種多様性をも描いていた。フェイが663号と必ず会うのも飲食街での食事中であるのも面白いし、カリフォルニアに憧れるというのも返還前の香港らしさなのだろうか。

 ハリウッドや日本映画のストーリーと違って、何が起こるかわからない展開だけに混沌とした中にもしっかりとした恋愛心理劇が成り立っている驚きもあった。残念だな~と思うのは、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」が使われすぎ!

kossy