「二万尋からやって来た元祖大怪獣」原子怪獣現わる 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
二万尋からやって来た元祖大怪獣
北極で某国の水爆実験。
その影響で、冷凍冬眠から目覚めた。
氷の中二万尋から現れたは、怪獣王ゴジ…ではなく、
原子怪獣リドサウルス!
『ゴジラ』の前年1953年にハリウッドで製作され、後世の怪獣映画に多大な影響を与えた元祖怪獣映画。
すでに『キング・コング』は誕生していたが、怪獣映画を大きく二つに分けた際の一つを確立。
『キング・コング』は世界の神秘、秘境大冒険。人間の欲によって翻弄され、悲劇的な最期を迎える。後の『モスラ』はこちらのタイプ。
本作が確立したのは、人類の科学によって目覚めもしくは生まれ、人類文明を襲撃。科学への警鐘。そして、史上初の“核の影響によって生まれた怪獣”。
本作があったからこそ…
言うまでもなく、『ゴジラ』の原型。
核実験の影響で誕生したという設定、
有史以前の恐竜タイプの大怪獣、
基本的なストーリー展開も。目覚めた怪獣は船舶などを襲い、遂に大都市上陸。猛威を振るうも、兵器によって息の根を止められる…。
北極の氷の下からの目覚めや屈指の名シーンである灯台襲撃は『大怪獣ガメラ』へ影響。
偽りなく、王道怪獣映画の基が築き上げられた。
特撮はレイ・ハリーハウゼン。本作が本格的デビュー作。
リドサウルスの細かな動きはさすが。
ここからハリーハウゼン伝説が始まったかと思うと感慨深い。
円谷特撮を世界に知らしめた『ゴジラ』のように。その辺も似通っている。
怪獣映画の元祖という地位、特撮などは特筆すべき点だが、ドラマ部分は平凡。ツッコミ所多々。
怪獣は現れ暴れ、最後は人類の手によって倒されるに過ぎない。
『ゴジラ』のような突き付ける反核、反戦、科学へのメッセージ性、重厚なドラマ性、怪獣は恐ろしい存在ではあるが同時に悲劇的な存在でもある…。それらには乏しい。
が、リドサウルスの血液によって人間が倒れていく様は、『ゴジラ』の放射能汚染より恐怖感あり。
本作と『ゴジラ』は何かと比較され、指摘点にもなり、それは後々にも尾を引く。
アメリカにしてみれば、『ゴジラ』は本作のパクリ。
ハリーハウゼンも『ゴジラ』を盗作と非難。
東宝は否定。似通っているのは明らかだが、全部が全部同じじゃない。『ゴジラ』には『ゴジラ』のオリジナリティーがある。
日本では『ゴジラ』の後に公開された為、さほど人気は得られず。本作が『ゴジラ』のパクリと間違えられたりもしたとか。
エメリッヒは某巨大イグアナ映画を、本作のリメイクのつもりで撮ったと爆弾発言…。
どっちが先とか素晴らしいとか、いいとか悪いとか、人によってはそれが大事かもしれないが、個人的にはそういう問題じゃないのが持論。
『キング・コング』があって、本作があって、『ゴジラ』があって、怪獣映画という偉大なジャンルが誕生し、怪獣映画はどんどん進化。
今も、これからも受け継がれ、拡がっていく。作り続けられていく。来年は待望の日本ゴジラ最新作!!\(^^)/
先人たちが遺した遺産。
それら全てがレジェンドであり、元祖であり、“怪獣王”だ。