ゲームの規則のレビュー・感想・評価
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Cupidも自分のせいにされてはたまらない
1939年のパリ社交界を舞台に、貴族らを風刺した作品。
既婚も未婚も無関係に、惚れた腫れたで恋愛に興じる中で、愛情、友情、階級差の「規則」は、その局面で面倒を避けるため都合良く優先されたり無視されたり。恋愛もパーティも余興も単に現実逃避の手段。
オーストリアからフランス貴族に嫁いできたChristineは、随分愛されキャラのようでした。隙が多くて優しくて、いわゆるボディタッチの多い女性なんでしょうかね(^_^;)。結婚当初から夫に裏切られていると知っても全く動じないのかと思わせて、実はかなり動揺しており、誰彼構わず愛を告白して駆け落ちを企む急変ぶり。
給仕達も恋沙汰で一悶着。一番はChristineに仕えることなんでしょうけど、Lisetteは単なるslutに見えてしまいました。ねっとりした視線と言い、食べ方と言い、Marceauは気持ち悪くて仕方なかったです…。Marceauのせいで妻も職も失うSchumacherに同情。というか、そもそもMarceauが雇われなければ悲劇は起きなかったでしょうし。
狩りのシーンでは、過去の参加者が銃の暴発で死んだことが笑い話に。うさぎや鳥を本当に殺しているようで、残酷さが際立っていました…。うさぎが息絶えるその瞬間の姿(T-T)。
このすったもんだが、どんな結末を迎えるのか、呆れながらも目が離せませんでした。
複雑に入り乱れる人間関係を各シーンに収めているのが上手かったです。
いつ練習したの?と不思議なくらい完成度の高い余興(^_^;)。
Christine役、Daliの妻Galaに似てません?
監督演じるOctaveの台詞:
「それが現代の一面さ。皆が嘘をつく。」
「挫折したと思うとやりきれない。頭の中で実現したと想像する。… 夢を見た後は少し辛くなるけど。」
過大評価だ!・・・と言いたかったのに、何でこんなに面白いの
ジャン・ルノワールの最高傑作が「ピクニック」で一番好きな映画でもある事は間違いないが、この「ゲームの規則」も中々・・・それどころかとても面白い映画だったとは。
「大いなる幻影」よりもずっと面白いし、ブルジョワ共の狂騒と没落していく様子を愉快に描いた傑作コメディです。
貴族たちの色恋沙汰、そしてこの映画そのものが“ゲーム”なのです。
第二次大戦開戦前夜、戦争の足音も聞こえず、オープンな性と浮かれきった貴族たちの危うさが生々しく描かれる。
社交場での絶えない笑い声、裏舞台で本音を洩らすように辛辣に語り合う人々、ユダヤ人に対する使用人たちの声など皮肉たっぷりの会話も怖い。
大陸を渡った英雄も、この狂騒に包まれた社交場では一人の人間でしかない。
まず、ファースト・シーンで一気に引き込まれる。冒頭の闇夜、熱狂的に騒ぐ民衆がひしめく場面から物語は始まる。
どうやら何かを待っているらしい。観衆の声と音がとにかくうるせえ。初っ端からカオスだ。
闇夜を切り裂き現れる飛行機と、降り立つパイロット。
彼は大西洋を23時間で横断した英雄だそうだ。しかし当の本人は「俺の女が来ていないので喜べない」そうだ。好きな女のために大西洋を渡ったのか?
実に男らしさを感じさせるが、同時にたった一人の女のために大金をポンッと使ってしまう貴族社会の道楽振りすら感じさせる。
最初30分は、そんな貴族たちの日常を穏やかに描く。
退屈するかと思ったが、その内、個性豊かな登場人物たちのやり取りや、群像劇として徐々に騒然となってきて楽しくなってくる。
車の衝突音だの、銃の発砲音だの音楽とかマジでうるせええええっ!
「大いなる幻影」や「十字路の夜」はパンッパンッとリアルな音だったが・・・拳銃の発砲音まで狂騒してやがる。
「大いなる幻影」では静かに泣くように発砲音は小さかった。この映画は、貴族たちの笑い声のように音がデカい。
食事会の場面や、その後のパーティーで起こる騒動は正にカオスだ。
時折現れる人形の不気味なこと。
狩りの場面は、とても神秘的で俺が好きな場面の一つだ。貴族たちのスポーツとして、余興として、滅びゆく貴族たちの絶頂が垣間見れる場面でもある。
林にわんさかいるウサギや鳥たちを、木に棒を打ちつける音で林の外へと追い立てていく。まるで祭りの囃子のようにカンカンカンと。
猟銃を持った狩人たちは、獲物が出てくる瞬間をひたすら狙う。
獲物が出た瞬間に一斉射撃。爆音が辺りに響きまくり、次々と獲物は地に倒され堕ちてゆく。本当に撃ち殺しているのだから凄い。
まるで戦争映画みたいだ。
銃声が響く中で情事にふけようとする男女の様子が印象的。
後半におけるパーティーでの狂騒ぶりもクスクスと笑ってしまう。
夫人に仕える従女が夫がいるにも関わらず召使と浮気、それにブチ切れて拳銃まで抜いて殺そうとする森番たちの追いかけっこは笑いが止まらなかった。着ぐるみを脱ぐシーンのドタバタも楽しかった。何してんだよルノワール(爆)
つうか、女性の腰に手を回そうとする時のやらしい手つきは何なんだよ。やっぱルノワールはムッツリ野郎だぜ。
360度を少しずつパンしていく画面とか、凝りに凝った画面も面白い。
パーティーで催される劇も可笑しいったら。
「大いなる幻影」や「黄金の馬車」といい、ルノワールは劇中劇が好きだな。ところであのピアノは自動ピアノ?
余りの馬鹿騒ぎに発狂しそうな女性、もう少しでパンツが見え(ry
パーティーの後の静けさ、そして騒ぎを咎められてショボーンと落ち込む森番の姿が可愛い。
「私はもうどうしたらいいんだ」という具合に涙までうっすら流しています。カワイソス。
そんな森番と召使の男が仲直りする場面が微笑ましい。
そして最後の最後。
再び情事を目にしてしまった森番。
いままでの怒りをぶつけるように、森番としての責任を貫くように、彼は銃を撃つ・・・。
そして一夜の狂騒を締めくくるように言葉を添えるルノワール。
面白かった。
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