黒い罠のレビュー・感想・評価
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マレーネ・ディートリッヒ
冒頭、タイトルバックのヴァルガス夫妻が歩く3分の長回しは凄い。国境の町はややこしい。どこからどこまでアメリカなのかメキシコなのか・・・かなり自由に行き来できるような雰囲気。
車の爆発はメキシコから乗った建設業者のリネカーとストリッパー女性の車がアメリカ側で爆発したもの。ヴァルガス夫妻は新婚旅行で国境の町へ来ただけだったが、妻のスージー(リー)メキシコ側のグランディス一家の悪党たちに出ていけと脅される。
とりあえずメキシコ人容疑者を尋問するクインランだったが、怪しい者を証拠を捏造して捕える非道な警部なのだ。彼には妻を絞殺されるという哀れな過去もあり、一度犯人を取り逃がしてからは全て事件を解決していた。しかし、捏造、冤罪という黒い過去にヴァルガスが気付き、調べ上げる。クインランにとっては鬱陶しくてしょうがないヴァルガスの存在。そうして、ヴァルガスと妻を麻薬常習者として仕立てるようグランディスに指示したのだ・・・妻はどうされるんだ?というドキドキ感もあり、後半はスリリングな展開だけど、ところどころ肝心な場面を描いてないので緊張が途切れてしまう。
麻薬漬けにされた妻。そばにはグランディスの死体。そこでのジャネット・リーの恐怖の叫び声はどことなく『サイコ』を彷彿させる。そして殺害現場に杖を忘れてしまうという笑いネタもある。というか、間抜けなところを見せるクインランはストーリーをつまらなくさせてる・・・
クインランがかつて通った酒場の女主人にマレーネ・ディートリッヒ。ちょっといい役だけど、全体に花を添えるまではいってない。
hunch
科学捜査が進歩していない当時だからこそのトリックばかりだけど、テンポが良いので飽きませんでした。立証方法は違法でも、刑事の勘は正しいと。
役者の動きを壁に投影する手法はこの頃の流行りだったのかしら。ヅラが取れるとか、コントみたいな演出もあって意外でした。
Ben-Hurを演じたHestonは、正義感が強く逆境に立ち向かう役が似合うのか格好良かったです。
ストリッパーの端役含めて女優さんがみんな美人でした。
光と影
これを古典的ストーリーと感じるのは、これが正しく古典だから。
冒頭の長回しはついこの前再見した『ブギーナイツ』を思わせるが、PTAはオーソン・ウェルズに影響を受けていたと考えてもあながち間違いではないだろう。
オーソン・ウェルズの(モノクロ)作品と言えば、『第三の男』も『市民ケーン』もそうだったように、影の使い方がとても印象に残っているが、それは今作でも然り。
建物の壁に映る影だけでなく、ガラスに映る景色など、後の作品やクリエイターに大きな影響を与えていることがよく分かる。
ストーリーとしては、国境の町で起きた事件を巡り、メキシコとアメリカ双方の警察官が対立するというものだが、今では腐敗のイメージが強いメキシコ側の警察官が罠にはめられる側で、アメリカ側の警察官が証拠のでっちあげも厭わない、ついには殺人まで犯してしまうという設定は今では新鮮に感じられる。
アメリカ側の警察官ハンクは妻を殺されたという過去を持ち、正義を求めるが故に悪に手を染めてしまう。この複雑な役は監督のオーソン・ウェルズが演じているが、“TOUCH THE EVIL”という原題からも主役はハンクなのだと思う。
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