「音楽とカーニバル」黒いオルフェ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽とカーニバル
総合:55点
ストーリー: 40
キャスト: 70
演出: 60
ビジュアル: 75
音楽: 80
カーニバルの前夜ということで、町には始終音楽が鳴り響く。映画の中でも始終歌って踊って大袈裟に動いて大袈裟に科白を言う。カーニバルだから音楽と踊りはまだいいとして、どうもこの大袈裟なラテン気質の乗りにはついていけない。だが騒がしい人々の中で物静かなユリディス役の女優が初々しくて良かった。
元はギリシャ神話の有名な話から製作されたということだ。だがブラジルの現代劇にしているということもあってか、神話の内容から想像していたものとは趣も随分と異なる。愛する妻のためではなく、会ったばかりで一夜の相手のために死者を探し回るオルフェ。神話では黄泉の国に人が入るため、オルフェは渡し守カローンや番犬ケルベロスに哀しい音楽を聞かせて感動させた。映画ではその代わりに警官や医師が出てくるが、せがまれても特に彼らに音楽を聞かせることなく、それでもオルフェはあっさりと中に入れてしまう。そして建物の中では、死んだユリディスの代わりに、彼女の精神が乗り移った霊能者が登場。振り返っては駄目、神話同様にそう言われても振り返ってしまうと、そこに美しいユリディスの代わりにいたのが、しわくちゃ顔のブラジル版「いたこ」の婆さん。そりゃオルフェじゃなくても逃げ出したくなるだろう。本当は深刻な場面なのだろうが、思わず笑いがこみ上げる。物語は神話のありえない世界を、そんなかんじで強引に現代劇にしたことで無理がある。
ボサノバの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンがサントラを手がけている。賑やかなサンバの合間に流れる、静けさと哀愁を湛えた名曲「カーニバルの朝」がとても印象的。名曲です。華やかなカーニバルの雰囲気と音楽を楽しむ映画だろうか。