「何故マフィアは皆んな“ピーター・ポール&マリー”?」グッドフェローズ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
何故マフィアは皆んな“ピーター・ポール&マリー”?
マーチン・スコセッシ映画は
「タクシー・ドライバー」をはじめ、
たくさん楽しまさせて頂いたが、
この作品は、
これまで一度TVで観た記憶があったものの、
マフィア映画であること以外は
ほとんど忘れてしまっていた。
ネットの解説によると、
アメリカ映画協会のギャング映画編では
「ゴッドファーザー」に次いで第2位に
選ばれているとのことだが、
「ゴッド…」はギャング映画というよりも
“家族”への想いの観点での大変優れた作品
と思っているので、
この作品からは何が感じ取れるかを
楽しみに再鑑賞した。
やや長尺の作品だが、小気味よいテンポと
登場人物のモノローグでの構成は、
分かりやすく、また、
観客を飽きさせることの無い見事な演出
ではなかったろうか。
しかし、
実話に基づいているとの内容については、
マフィアだからと言ってしまえば
それまでかも知れないが、
身勝手な登場人物ばかりに感じ、
確かに、スコセッシ監督の優れた演出に、
鑑賞時間内は犯罪ドラマとして
その世界に浸ることが出来るものの、
仲間を簡単に裏切ったり、
残虐な殺戮場面を見せられ続けられ、
例えば、戦争映画でさえ、そこから漂う
反戦意図を感じ取ることが出来るのに、
面白いと言えば面白いこの作品、
最後には悪は滅びる的物語を
目撃するとはいえ、
主人公が最後に得た安息も
仲間を売ることによるものだし、
「ゴッドファーザー」とは異なり、
他に何を感じ取ればよいのかが
分からなくなってしまった。
ところで、
作品の中でギャングのボスの親戚家族が、
あたかもフォークグループ
“ピーター・ポール&マリー”
かのような、聖書に因む
“ペテロとパウロとマリア”
の名前であるとの
主人公の妻のモノローグが流れたが、
果たして、この彼らの命名は
贖罪の意識からだったのだろうか。