劇場公開日 2020年8月14日

「半世紀ぶりに観た名作が実はエスプリがガッツリ効いた反戦風刺コメディでした」禁じられた遊び(1952) よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0半世紀ぶりに観た名作が実はエスプリがガッツリ効いた反戦風刺コメディでした

2022年3月13日
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鑑賞方法:映画館

この作品とともに記憶に残っているのはナルシソ・イエペスが奏でたあのアルペジオ。あれも“禁じられた遊び“と呼ばれることが多いですが“愛のロマンス“と呼ばれたりもします。実際あの曲が映画に使われたのは実は2度目で、1941年の『血と砂』というアメリカ映画が先であるとのこと。であれば“禁じられた〜“と呼ぶのはちょっと違和感があるので“愛のロマンス“がぴったりきそうですが、個人的にはRomance Anónimo、“名もなきロマンス“がいいなと思っています。実際作者不明の曲でその起源については諸説ある作品。元はウクライナ民謡ではないかという説もあったりして非常にミステリアスで興味深いです。

驚異的なのはナルシソ・イエペスは当時弱冠24歳、そんな新進気鋭のギタリストがギター一本で劇伴を丸ごと仕上げているということ。パリでたまたまルネ・クレマン監督と出会い、映画は撮り終わっていたもののどんな劇伴をつけてよいか迷っていた監督に依頼されたようです。既に予算も使い切っていたのでギターだけの劇伴隣、ひいては世界中で知られる名曲となったわけですから、名作というのはその周りに転がっている逸話までがキラキラと輝いています。

70年前の作品であることを忘れるくらい新鮮でみずみずしい作品。そして実に意外なことに切れ味鋭いエスプリが効いた風刺コメディ。冒頭の戦争映画さながらに凄惨な空爆シーンに度肝を抜かれますがその後はミシェルとポーレットが繰り出すキュートなボケツッコミも素晴らしいですが、村人達が繰り広げる微笑ましい喧騒にもイチイチ爆笑させられるのであの余りにも有名なラストシーンの切なさが俄然際立ちます。そして何よりミシェルとポーレットが始めた“禁じられた遊び”が象徴するものが今もなお繰り広げられている現実に沈鬱な気分となります。

よね