狂熱の孤独のレビュー・感想・評価
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【”伝染病が流行るメキシコの寒村で、フランス人元医師が酒浸りになりながらも病人を献身的に看病した訳。”ジェラール・フィリップはどんな役を演じても、魅力的であるなあ。】
■メキシコの漁村で酒浸りの生活を送るフランス人の元医師のジョルジュ(ジェラール・フィリップ)。
フランス人の旅行者・ネリー(ミシェル・モルガン)は夫を伝染病で失い、見知らぬ土地で途方に暮れていた。
伝染病がまん延していくなか、ワクチンも打たずに患者の世話をするジョルジュにいつしかネリーは惹かれていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ジェラール・フィリップ主演の映画は、配信で何本か見ているが、笑顔無き陰鬱な雰囲気を纏う青年や(この作品で、彼に嵌った。)、華々しい騎士や、
”今作の様なボロッチイ服を着ながら、妻を失った悲しみを酒で紛らわせつつ、伝染病に罹患するメキシコの貧しき民を救おうと奔走する男”など、様々な役を見事に演じる姿に、魅了されてしまう俳優である。
・今観ても、相当なイケメンで熱狂的ファンが今でもいらっしゃるというのも、うなづける。
・何と言っても、日本に来日された際に、あの高峰秀子さんから”気品もあって、とにかくヤラレチャッタのである。”と言わしめた方なので、人品も相当に有ったのであろう。お二人の写真は、楽しそうだもの。
・今作でも、ジェラール・フィリップは、ボロッチイ服を着ながら、夫を伝染病で亡くしたフランス人の旅行者・ネリーを、不器用に励ましながら、地元民も救おうと奔走している。その理由は、容易に想像できるが、医者であったのに妻の出産の際に助けられなかった心の傷からであろう。
ネリーが夫を失った際に”涙が出ないの。”と言った時に、”時間が経つと、少しづつ涙が出ますよ。”と優しく言う姿を見てしまえば、ネリーでなくとも惹かれて行くだろう。
<今作は、メキシコの寒村で出会ったフランス人の酒浸りの元医者と未亡人が、大切な人を亡くした哀しみと、二人が再生する様を描いた作品である。
『狂熱の孤独』とは、良き邦題であると思う。>
ロックダウンされた街で
1953年製作だが、舞台背景がコロナ禍の現代にも通じるラブストーリー。
主人公達は遠い異国の小さな街に暮らす外国人であり、互いに伴侶を失った後という、心理的にも閉塞感がより強い状況。そんな時にどうしたら生きていけるのか。あるいはそんな時だからこそ、なのか、愛する人が見つかって、孤独から救われるという、それまでの陰気な雰囲気からはびっくりのラストだった。
Jフィリップの元医師役は、本当は善人だと分かるまでの、哀れでもあり胡散臭くもあるアル中の感じがリアル。
ヒロインのミシェル・モルガンは、この後の「夜の騎士道」でも思ったけど、骨格がしっかりしていて大柄で、いやらしい男を気迫であしらう頼もしい感じが似合っていた。
ジェラール・フィリップとミシェル・モルガンの二大名優共演の何たる魅力
「七つの大罪」のイブ・アレグレ監督のフランス映画では珍しくメキシコを舞台にした作品。この映画の美点は、主演の名優ジェラール・フィリップと孤高の美しさにあるミシェル・モルガンの二大スター共演の魅力に他ならない。フィリップの虚無感にとらわれたダメ男振りの役柄も珍しく、美男スターに留まらない俳優としての野心が感じられる。旅先で夫を病死で失った人妻の心許ない状況でも気丈に振る舞う気の強さを窺わせるモルガンの女性像も素晴らしい。女の性(さが)と色気が入り混じった何とも言えない佇まいに見とれる程で、この映画で完全に彼女の虜になってしまった。
1983年 6月3日
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