劇場公開日 1966年2月12日

「不世出のエンタテイナー、ナット・K・コールの遺作。」キャット・バルー TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5不世出のエンタテイナー、ナット・K・コールの遺作。

2025年2月4日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

単純

 ジェーン・フォンダ、リー・マーヴィン主演のコメディ西部劇。

 いきなりオープニング・ロゴのコロンビア・レディ(女神)が女ガンマンに変身して二挺拳銃で撃ちまくる。タイトル忘れたけど、同社の映画には女神の首が転がり落ちるホラーも。こういうお遊びは好き。
 古典的な西部劇映画の旋律に交えて、エレキギターのポップな要素も駆使したフランク・デ・ヴォールのBGMもユニーク。

 シナリオは凡庸だし、演出にも目を見張るほどのものはない。それでも退屈せずに最後まで観られたのは、大企業の横暴、見世物化した処刑に群がる群衆、女性や人種に対する偏見など、社会批判や諷刺が随所に散りばめられているから。

 父を殺されたキャシーらが逃げ込んだ「壁の穴」は有名なギャング団の巣窟。1969年の『明日に向って撃て!』に先駆けてブッチ・キャシディが登場するが、もはやヨボヨボ…。
 19世紀末の終わりゆく西部を舞台にしたのも、旧い価値観へのアンチテーゼなのか。
 先住民に好意的なものの、ジャクソンが下僕のように白人に尽くし、偶然頭の皮(頭髪)を剥ぎ取り、興奮して奇声を発するなど、ステレオタイプな描き方なのがやや残念。

 キャシー役のJ・フォンダは有名な俳優一家出身。後年、社会派作品の出演が増える。

 普段こわもてやストイックなタフガイを演じることの多いリー・マーヴィンが、本作ではコメディと一人二役に挑戦。
 本来、彼の役にはカーク・ダグラスが予定されていたが、本人が拒否。代わって指名されたマーヴィンには、前年世界的に大ヒットしたマカロニ・ウエスタン『荒野の用心棒』の続編からもオファーがあったが本作を優先。そちらの代役には『リバティ・バランスを射った男』(1962)でマーヴィンと共演した脇役俳優リー・ヴァン・クリーフが抜擢。放っておけば同作が役者クリーフの引退作になった筈が、『夕陽のガンマン』(1965)でのモーティマー大佐役が嵌まった彼は40歳にしてブレイク、その後マカロニ・ウエスタンの大スターに。人生の綾は不思議なものです。
 一方のマーヴィンは本作を択んだ結果、オスカーはじめ複数の主演男優賞を獲得。でも、そこまでの演技かは、少々ギモン。どうしても大佐役のクリーフと比較してしまう。

 ユダヤ系のコメディアン、スタッビー・ケイとともに弾き語りの進行役をつとめたのは、歌手ナタリー・コールの父としても知られるジャズマンのナット・キング・コール。
 当時既に癌が悪化していたが、最後まで撮影に参加したコールは、作品公開前に他界。
 人気者だった彼が命を賭けねばならないほどの作品だったか、彼でなければならない役だったかはもっと疑問。

 NHK-BS4Kにて視聴。

TRINITY:The Righthanded Devil