「エミリー・ワトソンは女優の中の女優です」奇跡の海 あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
エミリー・ワトソンは女優の中の女優です
先日、TUTAYAの更新ハガキが送付されてきて、週末に更新と無料レンタルで行ってきました。なにか深くて暗めの、それでいて最後には前向きになれる映画を観たいと思ってました。だからアメリカ映画は真っ先に除外しました。それで悩んだあげくに借りたのが本作です。
監督はデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー。はっきりいって大っ嫌いな監督さんです。しかしもう二度と観たくないとこの人の作品を観るごとに自分に言い聞かせていたにも関わらず、何故かまた観たくなるんですね、この人の作品は。
前置き長くなりましたが、本作はスコットランドの閉鎖的で男根崇拝的な村を舞台に繰り広げられるあまりにも苛刻で悲しい愛の物語です。主人公は神を真摯に信仰する、純真無垢な若き女性。あまりに純真無垢すぎるので、それまでの人生まわりからの扱いは冷たいものとなっています。薬を飲まされたり、病院に監禁されたりと。それでも善良なる彼女はそんな周囲の人たちを一回も恨んだことがありません。
そんな彼女にもようやく人生の伴侶となる男性が現れます。「神様への祈りが通じた」のです。そして二人は結婚します。男性は油田で働く出稼ぎ労働者で、定期的に二人は離ればなれになります。そして仕事場で事故が起き、男性は全身麻痺になり送還されるのです。
ここからの展開が超ヘビー。
一途な女性は夫の生きる希望になろうと、求めらていることは絶対に実行しようとしていきます。そうやっていくことで夫の体が元に戻るのだと頑なに信じて。その夫の願いとは「男性不能」となった自分にずっと寄り添うのではなく、早く別の男を見つけて欲しいということなのです。
ここからの展開はネタばれなので書きません。
でも、ほんとにヘビーです。
それでも、題名が示唆する通り、最後に奇跡が起こります。
この作品の中で特色を放っているのがその主役を演じたエミリー・ワトソン。本作が映画デビューだなんて驚きです。本物の女優さんです。この役を演じるために生まれてきたと言っても過言でないくらい。そして、こんな大役に新人を抜擢したラースの眼力には頭が上がりません。
ラースって人は、普段見ることのない人間のリアリティをサディスックばりに観る人につきつけます。その徹底ぶりといったら生半可じゃありません。真剣そのものです。ほんと嫌いです、この監督さん。
それでもですね、何故かそういう映画ほど自分を成長させていたんだと、後になってから必ず気づくんですよ。つぎラースの映画を観る気持ちになれるのは何年後か分かりませんけど必ず観ちゃうんだろうな~。